予選落ちが発生するほどたくさんの参加者で賑わった
新規格NAの軽自動車によるレース『東北660選手権』が今年もスタート。2011年に始まった当初から30台を超える台数を誇っていたが、12年目を迎えても盛り上がりはまったく衰える気配がなく、5月5日に行われた開幕戦では過去最多の72台が参加した。スポーツランドSUGOで繰り広げられた熱戦の模様をレポートしたい。
当日は1台がブレーキ系のトラブルを抱え出走できなかったが、それでもグリッド数は45なので26台が予選落ちとなり、コンソレーションレースへの出走となってしまう。
朝は公式レースと同じように車検を実施、おもに安全面のチェックが行われる。続いて新型コロナウイルスの感染に配慮した屋外ブリーフィング、終了したらクラスごとに枠をふたつに分け30分ずつの練習走行。コース上が混雑しすぎるのを避けるための措置で、2枠を総合したタイム順に予選のA組とB組が決まる。
白熱したタイムアタック合戦となった予選
予選はどちらのグループも完全なドライ路面で走行でき、総合トップは昨年のシリーズチャンピオンであるアベ(アルト/HA23V)、続く2番手には若手の有望株である細田駿也(エッセ/L235S)、3番手は最年長ドライバーの大塚 猛(エッセ/L235S)と改造範囲の広い1クラス勢が並ぶ。
ハイグリップタイヤが使える2クラスはコースレコード保持者の鈴木律幸、ニューマシンを投入した、同チームでしのぎを削り合う高橋康平、3クラスからステップアップして初戦の小松日高と、ミラ(L275V)がトップ3を独占した。
セカンドラジアル限定の3クラスは、石川颯斗(アルト/HA23V)がポール、双子の兄弟が別クラスに参加している茂木勇輝(プレオ/L275B)が2位、静岡からの遠征組である嶋崎健太(アルト/HA23V)が3位とアウェーながら大健闘。
2ペダルだけの4クラスは遠く岡山からやって来た梶井貴寛(アルト/HA36V)が、前日から走り込んだ甲斐あってポールポジションを獲得する。5クラスは初心者が対象でシリーズポイントは付与されないが、1~4クラスのいずれかに合致している車両であれば何でもOKだ。
決勝は波乱の展開も生まれるほどアツいバトルに
決勝は1クラス3番手の大塚 毅が痛恨のマシントラブルにより、数ラップ遅れてのピットスタートを余儀なくされ優勝争いから脱落。アベが細田に食い付かれながらも貫禄の走りでレースをリードするが、ファイナルップの最終コーナーで周回遅れのマシンがアベのラインを塞ぎ、0.027秒差で1クラスにデビューしたばかりの細田が総合優勝を飾る。
ただし、予選ポールポジションと決勝ファステストラップはアベで、それらのポイントを加算すると細田と同じ15になりイーブン。第2戦からはますます面白い展開になりそうだ。
2クラスは鈴木と高橋の身内バトルが最後まで続き、結果的には高橋が逆転して優勝を決めた。3クラスは石川が他を寄せ付けない速さでそのまま優勝、2位は茂木、3位はこれまた兄弟で参戦の大越 拓(ミラ/L275V)が入る。注目の4クラスは梶井が総合でも27番手に食い込む健闘で優勝、アルト(HA36V)のポテンシャルを大いに見せ付る結果となった。
予選落ちレースも迫力あるバトルが繰り広げられた
本戦と変わらず熱かったのは予選を通らなかったドライバーによる、5周で争われるコンソレーションレースだ。大越海斗(アルト/HA36V)、巳ノ瀬健太(ミラ/L275V)、筧 拓実(アルト/HA23V)ら、2クラスで優勝しても不思議じゃない実力者が多くおり、彼らでもひとつ間違えると予選落ちしてしまうというレベルの高さをあらためて痛感した。
コンソレーションの中盤グループでもライン取りやブレーキングを見る限り、ナゼ予選を通っていないのか不思議に思えるほどテクニックを披露している。おまけに接触する寸前のバトルでもお互いルールとマナーは遵守し、レースカーも車検で不備を指摘されるケースはほとんどない。レース終了後には入賞した車両に対し再車検が行われるが、コチラも当然のように違反はなくリザルトが確定した。
単純なエントリー台数の多さだけじゃなく、モラルの高さも人気が続く理由のひとつだろう。東北660選手権の第2戦は6月26日(日)、福島県エビスサーキット東コースで開催される予定だ。当日は過給器の付いた軽自動車による『東北660ターボGP』の第2戦、そして先代アルトによる『東北660選手権・HA36カップ』の開幕戦も併催。エビスサーキットの入場料だけで観戦できるので、興味のある人はゼヒ現地に足を運んでもらいたい。