ふたりでイベントを楽しむことがケンカをしない秘訣だった
横浜開港の歴史を伝える開港記念イベント「ハマフェス Y163」のサテライトイベントとして、2022年5月20日(
クラシックカーラリーは、ドライバーと助手席のコ・ドライバーという2名1組で参加するのが基本だ。コ・ドライバーは、ドライバーが運転に集中できるよう、走行ルートが記されたコマ図(マップ)を読み、ゴールまでの道筋を正確にナビゲートする必要がある。また、線踏みと呼ばれる、決められた区間を設定されたタイムで走行する「PC競技」では、1000分の1秒単位で争われるため、仲のいいクルマ好き同士でラリーに慣れていても結果を出すのが難しい。傍から眺めていると、クラシックカーのパレードにしか見えないかもしれないが、じつは頭脳戦なのだ。
しかし、クルマに興味がない奥さまなどがコ・ドライバーを務めていると、ルートマップのコマ図を読み取りながらの道案内は間違ってしまうことも多々ある。ケンカや言い争いになりそうな気もするが、参加している夫婦はどのようにして苦難を切り抜けているのだろうか? 今回は前回に引き続き、ご夫婦でエントリーされていた参加者に「一緒にエントリーするようになったキッカケ、PC競技で失敗してしまったときの対処法、円満の秘訣」などを伺ってきたので、その後編をお伝えしよう。
高松彰洋さん/高松容加さんペア 1968年式 ポルシェ 912
「クラシックジャパンラリー2022 横浜 Y163」に北海道から参加した高松さんファミリー。愛息の惺那くんは8歳で、愛機は三和自動車が正規輸入した右ハンドル/右ウインカー仕様のポルシェ 912というレア車だ。4年ぐらい前に友人から譲ってもらったのだという。
2018年に彰洋さんが北海道で開催されているクラシックカー・ツーリング&ラリーの「Trofeo Tazio Nuvolari」にコ・ドライバーとして参加。2019年に先輩のフィアット 131 アバルト ラリーをドライブし、夫婦&愛息の3名で参加したのがファミリーでの初ラリーだった。
彰洋さんは「旅行を楽しもう」と容加さん&惺那くんを誘い、PC競技で失敗したときは「なかなか、うまくいかないね」と笑っているそうだ。彰洋さんによると、ミスコースしたときは車内が微妙な空気になるものの、到着時間が少しぐらい遅れても着けばいいよね、と早めに自分が折れているらしい。そうすることがケンカをしないようにする最大の秘訣とのことで、とても重要だと話してくれた。
コ・ドライバーの容加さんも景色を見ながらクラシックカーラリーを楽しんでいるらしく、愛息と参加するので今後オープンモデルかつ4人乗りのクラシックカーが欲しいそうだ。現在、ポルシェは、930、964、997ターボ、2台の986ボクスター(レース用を含む)、アルファロメオは1300ジュニアなどを愛用しているが、クラシックカーのオープンモデルは持っていないらしい。912に乗るときは窓を全開にしており、雨のときも窓を閉めると曇るので、屋根があるのに濡れている……とも話してくれた。
ラリーに仲よく参加するために日頃から「ラリーに参加して、国内、できれば海外の行ったことのない場所に行こう」と話しているらしく、これから年を取ってもクラシックカーラリーが夫婦で楽しめる趣味になるように心がけているそうだ。
加藤佳支信さん/加藤三美子さんペア 1936年式 MG TA ミジェット
筆者が計測器を借りている加藤佳支信さんは、2016年7月に開催された北海道クラシックカーラリーが初参加で、三美子さんもこのときから一緒に楽しんでいるという。佳支信さんによると、北海道が初だったので旅行気分で行こう! という感じで三美子さんにコ・ドライバーをお願いした。
PC競技で失敗したときは「失敗も多いので、1本ダメでも、その次をちゃんとやること」を心がけているとのこと。ケンカしないようにする秘訣について佳支信さんは考えたことがないそうだが、何かミスがあっても気持ちの切りかえを早くすることで、ケンカしないようにしていると話してくれた。
三美子さんは「ラリー中はケンカしたことがありませんが、ケンカになったら楽しくないので言葉には気をつけています。ときには我慢もしていますが……」と回答してくれた。
コ・ドラも楽しめていますか? という質問に対して、佳支信さんは「初めのころはあまりそうでもなかったようですが、2年目ぐらいから友だちも増え、PC競技もマジメに取り組むことで楽しさが出始めているようです」と話す。
三美子さんは「最初は全然楽しくなかったです。何が楽しいのかも分かりませんでしたが、ラリーに参加する回数が多くなってお友だちもできて、PC競技も分かるようになり、楽しさがわかるようになりました。夫婦でのお互いの共通の楽しみができましたね。最近はコマ図にも慣れて、余裕も出てきて、ラリーだけどあちこちに連れて行ってくれるので、旅行気分で楽しんでいます」と話してくれた。
オープンモデルは髪が乱れるし、雨で濡れるので、コ・ドライバーはイヤではありませんか? という質問もしてみたが、佳支信さんは「特別、言われたことがないのですね。オープンも屋根ありも持っていますが、やはりラリーはオープンの方が楽しいですよね。でもバルケッタモデルを買ったら乗らないと言われています……」と話し、三美子さんは「バルケッタはイヤですが、屋根が閉まるオープンカーは好きです」と回答してくれた。
ラリーに仲よく参加するために日頃から心がけていることはありますか? という質問に対して、佳支信さんは「特別無いですが、楽しく生活を送ればラリーも共通の楽しみに変わってくるので、そこを心がければいいのではないでしょうか」と笑顔で話してくれた。三美子さんは、いつもラブラブ状態なので特別無いそうだ。
遊佐勇人さん/遊佐直子さんペア 1967年式 ロータス エラン S3 D.H.C
「楽しいクルマのイベントがあるようなので行ってみない? 食事も美味しいし、友人夫婦とも一緒だから」という言葉で奥さまをクラシックカーラリーのコ・ドライバーに誘ったという勇人さん。2012年のラリーニッポンが一番最初のクラシックカーラリーだったという。
PC競技で失敗したときは、表向きは検証と反省をするものの、実際はいかにその後も冷静を保って次の準備ができるか、なので、失敗を忘れることで対処しているそうだ。そして、無言で運転し、発言をガマンすることで、PC競技失敗時のケンカを回避しているらしい。
勇人さんによると、直子さんが、こんなことが楽しかったとは絶対に言わないので「不満が出なければ楽しんでいると思われます」と解釈し、オープンモデルは髪が乱れ、雨で濡れるので、幌は開けない約束になっているそうだ。いつもクーペに買い替えるように言われているのだという。
考えすぎると荷物が増えたり、買い物に行ったりしないといけなくなるので、あまりラリーの話をしない、クルマの整備以外は準備をしないことを日頃から心がけ、仲よくラリーに参加しているそうだ。
疋野 繁さん/疋野則子さんペア 1969年式 マツダ コスモスポーツ
どのイベントでもアイドル的な存在となるコスモスポーツを愛車としている疋野さんは、夫婦でのクラシックカーラリー参加を2年弱ほど前から開始した。コロナ禍の影響もあって、まだ参加回数は5回ほどなのだという。
則子さんは、まだ行ったことがない観光地の訪問と、豪華な宿泊ができる観光気分が魅力だと感じ、参加してみようと思ったそうだ。あまり成績を重視していないので、PC競技で失敗したときは「アレー、だいぶ早い、かなり遅い、などは口にしますが、ボタンのタイミング、進入速度の判断ミスなどはお互いさまなので、いつも今回もダメだったなの口癖でスルーしています」とのこと。それがケンカをしない秘訣になっているそうだ。
「真剣にPC競技をされている方々には申し訳ないのですが、旧車で観光に来ている感覚で参加しています。車窓からの見どころチェックで素晴らしい景色を見て、おいしい食事をいただき、本当に普段の旅行のような気持ちでいます。何よりどの会場でも旧車に感激して皆さんが話しかけてくれますので、私どもの趣味の旧車が時代を遡り、それがお互いを楽しませてくれる時間になっています」と繁さんが話してくれたので、一緒に参加している則子さんもクラシックカーラリーを愉しんでいるようだ。
ちなみに、コスモスポーツはオープンモデルではないが、雨が
お金は無くても愛があれば……というような歳でもないが、必要以上の財産を持つと欲が出ておかしくなるため、ラリーに仲よく参加するために日頃から“寄付ができるぐらいの余裕ある精神の夫婦を目指す”ことを心がけているそうだ。
やはり、どのペアも仲がいいので、好成績を残す&完走するために共同作業が必要となるクラシックカーラリーは、ドライバーの単独走行が基本となるサーキットイベントよりも男女が円満になりやすいといえるだろう。旧車で安全にモータースポーツを愉しみたいと思っている方にも、条件が整えばファミリーで参加することすらできるクラシックカーラリーはオススメだ。