80年代以降ターボエンジンが台頭する
1980年代初頭、「ターボ VS DOHC」という性能競争があった。発端は1979年、日産が430系セドリックにL20ターボエンジンを積んだこと。一方、トヨタは2T-G、4A-G、5M-G、6M-GとNAのツインカムエンジンで対抗。
どっちがパワフルでスポーティなエンジンなのか、とそれぞれ長所と短所を比較していたわけだが、程なくして両方を組み合わせたDOHC+ターボが最強ということで決着がつく。
ただF1でもNAからターボの全盛時代を迎え、ふたたびNA時代に戻り、さらにハイブリッドターボ時代を迎えた。同じように、市販車でも80年代のターボブームとなったが、バブル崩壊後燃費が悪いなどの理由でターボブームは去り、近年のエコカーブームになると、逆にダウンサイジングターボに注目が集まるなど、NAとターボは浮き沈みを繰り返している……。
エンジンのキャラクターはセッティング次第で変わる
というわけで、ひと昔前なら燃費ならNA、パワーならターボというわかりやすい図式もあったが、上記のように燃費に有利なターボもある。パワー&トルクはNAだったら排気量、ターボだったらブースト圧次第ともいえ、そうなるといいエンジンの条件は、レスポンスとスムースネスで決まると言っても過言ではない。
レスポンスのいいエンジンとは、アクセルを踏み込んだとき、その操作量に比例して加速Gが高まり、アクセルを戻せば、スッとエンジンの回転が落ちるエンジン。この点に関しては、ターボよりNAの方に分がある。
ターボエンジンもターボチャージャー本体と制御技術の進化によって、かつてのようなターボラグはほとんどなく、GRスープラのB58エンジンのように、1800rpmから5000rpmまで51.0kg-mのピークトルクをキープする、とんでもないエンジンも出てきている。こういうエンジンは当然ピックアップも抜群だが、ターボエンジンの場合、どうしてもアクセルオンのときとアクセルオフのときのフィーリングに不自然さが出てしまう。
またスムースネスさに関しては、「モーターのような」という表現があるが、今の時代、EVやハイブリッド車はまさにモーターで加速するので、NA・ターボを問わず、レシプロエンジンではそのスムースネスさではかなわない……。
スムースな吹き上がりなどレスポンスの良さはNAが勝る
しかし、高級車にふさわしいスムースネスさ、加速の良さ、静粛性、最高速といったトータル性能で考えると、多気筒のNAエンジンが最良だろう。直6、V8、V10、V12と多気筒になればなるほど、クランクシャフトが一回転する間の爆発回数が増えてエンジンはスムースに回るようになり、高回転化も可能になる。気持ちのいいエンジンというのは、この高回転までよく回るというのも大きな要素なので、多気筒NAエンジンは今でも魅力的だ。
直4などのNAエンジンでもS2000のF20Cのように9000rpmも回るエンジンもあるし、ターボエンジンに比べ、インタークーラーなど補機類が少なく、エンジン周辺の重量を軽くできるのも大きなメリット。
ターボはどうしても燃焼室の温度が高くなりすぎるので、熱との戦いが課題になる。さらに、オイルの劣化も早いし、エンジン本体の寿命、オーバーホールの間隔もNAエンジンより短い。ランニングコストも必然的にNAが有利だ。エキゾーストノートは好みが分かれるところだが、排気経路にタービンが挟まるターボエンジンよりNAエンジンの方が抜けはよく、気持ちいい!?