シトロエン、デ・トマソと経営が変わりながらも数々の名車を輩出
ロードカーを積極的に開発するようになったマセラティは、高級スポーツカーの3500GTを1958年にリリースし、1963年のトリノ・モーターショーにおいて初代クアトロポルテをデビューさせた。このクアトロポルテはラグジュアリースポーツセダンという新しいカテゴリーを市場にもたらすことになり、その系譜は現在まで脈々と続いている。
60年代にクアトロポルテのほか、ミストラル、ギブリ、メキシコ、インディなどをリリースしたマセラティは、シトロエンの傘下に入った1968年以降、スーパーカーも生産するようになる。1971年にボーラ、その翌年にメラクやカムシンを発表した。ジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたコンセプトカーのブーメランやメディチも有名だ。
1975年にシトロエンと決別し、デ・トマソの傘下に入ってからは、ロンシャンをベースとしたキャラミを1976年にリリースし、1981年から発売したビトゥルボがヒット作となったことで、日本でもクルマ好きの間で馴染み深い存在となった。カリフ、228、2代目ギブリ、シャマルといったクルマたちがビトゥルボ系だったので、いかに数多くのファンを獲得したのかを窺い知れるだろう。
いまは「ステランティス」内で高級スポーツカーを受け持つ
その後、1993年にフィアット傘下となり、1997年にフェラーリの子会社となってからはふたたび骨のあるGTカーをラインアップするブランドとしての地位を取り戻すことになった。だが、2005年にフェラーリと離れてからは、スポーティなラグジュアリーブランドを目指すようになった。
現在の新車ラインアップは、グランドツアラーのギブリ(3代目)、パフォーマンス・ラグジュアリーサルーンのクアトロポルテ(6代目)、ハイパワーSUVのレヴァンテ、新型コンパクトSUVのグレカーレ、スーパースポーツカーのMC20、快速スパイダーのMC20チェロという6モデルとなっている。
スーパーカーを手がけてからのマセラティが、過度にインテリアを豪華にした高性能パーソナルカーばかりを生産するメイクスへとその姿を変えたこともあり、レーシングフィールドでの実績や高性能GTカーブランドとして名を馳せたことなどを想起させない時期が存在したのは事実。しかし、フェラーリのコントロール下に置かれてからのマセラティはふたたびかつての威光を取り戻し、見事にセンスのいい人々にチョイスされる誇り高きクルマへと変貌を遂げたのであった。
アモーレ(愛)、カンターレ(歌)、マンジャーレ(食)に彩られた甘く楽しい生活=ドルチェ・ヴィータを愉しみたければ、イタリア車らしさが満載状態となっているマセラティをチョイスするといいだろう。なお本稿で言及した歴代マセラティ車はすべて画像ギャラリーに収録してあるので、ゆっくりご覧いただきたい。