マンマキシマム・メカミニマム思想による傑作パッケージを採用
もちろんシャーシ性能も高評価に値するもので、前後輪で高い接地性を確保したフロントのストラット式サスペンションやH型トーションビーム式リヤサスペンションを採用。エンジンをコンパクトに設計したことで小回りが利く4.7mの最小回転半径を可能にし、荷室の張り出しが少なく広い室内空間の実現にも大きく貢献した。
このように初代フィットは、新開発のエンジンやCVT、センタータンク・レイアウト、サスペンション、スタイリング、どれかひとつが欠けても大ヒットにつながらなかっただろう。ホンダのそれまで地道に開発してきた技術力によって見事なマスターピースとなり、これまでの思想を継承しながら現在まで続く長寿モデルとなっている。
さらに発売から1年半後の2002年9月には、1.5L VTECエンジンを搭載した「1.5T」を追加する。ホンダ・マルチマチックSにマニュアル操作できる7スピードモードを加えたことで、走りにこだわりたいユーザーに訴求。14インチアルミホイールも標準装備され、庶民派のフィットに上級さをプラスしたことで人気を集め、2004年のMT仕様の追加ラインアップに繋がることになる。
また、あまりの人気に2002年11月には、海外向けに現地で作られていた4ドアセダンを日本に輸入しフィット・アリアとして発売。1.3Lと1.5Lエンジン搭載の5ナンバーサイズ4ドアセダンは希少であり、500Lというボディサイズを考えると大容量のトランクもあってセダン派から支持された。
グローバルも含めて7年間で200万台の販売を記録した
ただし、初代フィットにもネガティブな面はあった。例えばCVTがルーズ(いわゆるラバーバンドフィール)で、トルクコンバーターを備えないことから低速域ではCVTがギクシャクするようなフィールがあった。また、ある意味“ホンダ車あるある”と言える、灯火類を交換する際にインナーフェンダーやウインドウウォッシャータンクを外さないと作業できないなど、メンテナンス性は決して褒められたものではなかった。
こうした面もあったが、初代フィットはホンダ短期間で売れまくった。2001年6月の発売以来、同年12月には10万台(国内)を販売。1年後の2002年6月には20万台(国内)にまで販売台数を伸ばし、この年、カローラが33年に渡りトップを保持し続けてきた年間登録車販売台数1位の座を奪った。さらに2003年には50万台(国内)を達成し、その後も毎年上位にランクインするなど、2代目が登場した2007年までに200万台の世界累計販売台数を記録した。
21世紀とともに始まった初代フィットは、小さくても積載力ある便利で燃費が良いクルマの代名詞といっていいだろう。その人気はN-BOXといった軽自動車に移り変わっている。もしN-BOXのパッケージを持った5ナンバーサイズのコンパクトモデルが発売されたら……と考えると、それはそれで胸が膨らむのだが。
■ホンダ・フィットW(FF) LD-GD1主要諸元
○全長×全幅×全高:3830mm×1675mm×1525mm
○ホイールベース:2450mm
○車両重量:990kg
○乗車定員:5名
○最小回転半径:4.7m
〇室内長×室内幅×室内高:1835mm×1385mm×1280mm
○エンジン種類:L13A型直列4気筒SOHC
○総排気量:1339cc
○最高出力:63kW(86ps)/5700rpm
○最大トルク:119N・m(12.1kg-m)/2800rpm
○トランスミッション:CVT
○サスペンション 前/後:ストラット式/トーションビーム式
○ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/LTドラム
○タイヤサイズ :175/65R14