良くも悪くも親の影響は趣味ライフにも影響する!?
ここ最近「親ガチャ」という言葉を目にしたり、耳にする機会が多くなった。「親ガチャ」とは、子どもがどんな親のもとに生まれてくるのかは運まかせであり、その運まかせの家庭環境によって人生が左右されるということを表している。
カプセルトイのように中身がランダムで決まるスマホゲームのアイテム課金方式の呼び名が「ガチャ」であることから、どういう境遇に生まれるのかを天に任せる、という意味での「親ガチャ」という言葉が誕生したのである。
大富豪の家なら最高だが親の影響は千差万別
カーマニアの世界でも「親ガチャ」が存在しており、ラッキーだった場合の実例を紹介すると、20歳の誕生日に母親がマクラーレンF1を買ってくれた人、幼いころからの父親による英才教育のおかげでフェラーリのワンメイクレースでチャンピオンになった人、父親がアストンマーティンのメンテナンスをオーダーしているスペシャルショップに自分のランチアを預け、オトーサン用の請求書に修理代金を合算してもらって支払いを免れている人、大手自動車メーカーで車両の開発を手がけている父親の影響で自身もクルマ好きになり、大手自動車メーカーのデザイナーになった人などがいる。
オモシロイことに、親が熱心なカーマニアであるがゆえに高級車がデフォルトとなり、スーパーカーであってもまったく興味や関心を示さなくなった人や、親が原チャリ生活だった反動でクルマ好きとしてすくすく成長し、大人になってからポルシェ912を愛用している人も存在している。そういうケースまでを含め、まさに「親ガチャ」なのであった。
75歳の父から46歳の息子へカーマニアのバトンタッチ
「親ガチャ」=若い親子の話だと思いがちだが、筆者の知り合いのFさん親子/父親75歳、息子46歳がカーマニア趣味の世代間の継承を見事にやってのけたので、旧車にまつわる「親ガチャ」の美しき成功例(サンプルケース)として紹介しよう。
大の英国車好きである父親は、20歳のときからMGマグネットZBに乗ってきた。つい先日、父親が75歳になるのをきっかけに名義変更し、息子が引き継ぐことになった。だが息子いわく、幼少期はクーラーが無くて乗るのがイヤだったという。
暑いクルマがイヤだったものの、息子が24歳のときに父親がMGミジェット1500を購入し、そのクルマを運転させてもらってから息子もマニュアル車に興味を持つようになった。その前はバンド活動に夢中で、オートマ限定で運転免許を取ろうと思うほどクルマに興味がなかったらしい。結局、父のススメもあり、息子は運転免許をマニュアルOKで取得した。
もっとも身近な趣味の同志として助け合っている
現在、「東京ベイサイド・クラシックカップ(Tokyo Bayside Classic Cup)」と呼ばれる旧車のサーキットイベントに親子で参戦しているFさん父子だが、その理由について息子はこのように話してくれた。
「26歳のときに僕も自分のMGミジェット1500を購入し、父が当時参戦していたインタークラブのMG-CUPに出走しました。Tokyo Bayside Classic Cupに父は初めから参戦していて、僕は子育てやら起業やらで忙しく、2014年ごろからサーキット復帰して一緒に走るようになりました」
父親がクルマ好きで良かった? と質問してみると、
「それは、どうなのでしょう? 母は半分呆れていますが、父が幸せそうなので良かったのではないでしょうか。親ガチャという言葉はあまり好きではありませんが、確かにあったと思います。実家にクルマを置くスペースがあったので、車庫を借りる必要がありませんでした。これが一番大きいです。結婚して実家を離れてからもクルマを置かせてくれて、転勤や海外出張などで東京を離れる際も父が定期的にエンジンをかけてくれていました」
「ほかにも、まったく同じMGミジェット1500を父も所有していますので、父が外した部品を流用したり、カスタムの案を共有したり、本当に恵まれた環境だったので維持してこれたのだと思います。この親ガチャが世間一般的にはアタリなのか、それとも泥沼にハマってクルマに散財するハズレなのか分かりませんが、僕がアタリと思えばアタリなので、両親には感謝しかありません。頑張って稼いで、父から引き継いだMGマグネットZBと自分のMGミジェット1500を維持していこうと思います」
子どもがアタリと思えばアタリというのは名言なので、「親ガチャ」で恵まれなかったな……と思っている人は「育ててくれてアリガトウ!」という段階から親に感謝し、これからは自身の「親ガチャ」を肯定しながら生きていくといいだろう。