スイッチ類に至るまでクラシック風にコーディネート
ボディカラーのバリエーションもなかなかのハイセンスぶり。アクアグレー、オリーブグレー、アイボリー、テラコッタの計4色だったが、ポップであったりヴィヴィッドであったりしない、スノッブなスタイリングに合った展開だったといえる。
一方でインテリアでは、鉄板剥き出しのドアやインパネ、アイボリーのメーターパネルやステアリングホイールなどがレトロな味わい。ウインカー&ワイパーの操作レバー、空調スイッチ、専用デザインのオーディオもなかなか凝ったデザインだった。非常に言葉少なな4つ折りのカタログには「モノトーンの丸型メーターや、象牙をイメージした部品を使い、シンプルでリゾートっぽい雰囲気の心地いいインストルメント・パネル」と説明文がある。
多くを語らないカタログでもヒットした不思議なクルマ
無粋なようだがエンジンにも触れておくと、搭載されたのはマーチと同じ4気筒987ccのMA10S型(ネット52ps/7.6kg-m)で、5速MTまたは3速ATの組み合わせ。最小回転半径は4.4mと小さく、装着タイヤは控えめな155SR12だった。
いずれにしてもこのパオのカタログは、4つ折りの1枚モノ、しかも片面は全面ポスター風の1枚写真だった。もう片面も「言葉少なに」必要最小限のスペックと説明文、内・外観写真が載っている程度。このカタログ以外のパオのカタログが存在していたかどうか知らないのだが、いかにもコンセプチュアルなこういったカタログで通用したのだから、その点でもパオはすごい。こういうカタログのこういうクルマが生まれることが許された、飄々とした時代だったということなのだろう。