いとも簡単にクルマを盗み去る「CANインベーダー」の手口とは
クルマの盗難に対して、各自動車メーカーは専用キー以外ではエンジン始動することができないイモビライザーなどの防犯対策を施している。しかし対策が施された高級車を筆頭に、車両盗難は一向に減ることはない。日々進化しているクルマの機能に追従して、新たな犯行手口が次々と生まれているのだ。その代表的な手口が、スマートキーの微弱電波を増幅するリレーアタックや、スペアキー機能を悪用したコードグラバーだ。ドアをこじ開けたり、窓ガラスを割ったりすることなく、いとも簡単にクルマを持ち去ってしまう。
そしてこれらの手口が知れ渡って盗難対策が施されるなか、現在、高級車盗難で猛威を振るっているのがCANインベーダーという手法だ。
車高が高いランクルなどの高級SUVは窃盗犯から狙われやすい
先日のニュース番組で「防犯カメラが捉えた車両盗難の一部始終」が放映されていた。その防犯カメラの内容はというと、レクサスの周りをうろつく犯人が周囲に誰もいないことを確認すると、左フロントタイヤの辺りに座り込みフェンダー内に手を差し込んだ。そして2〜3分後、運転席の方に行くとドアは簡単に開き、エンジンを始動させて立ち去った。まさにこれがCANインベーダーの手口だ。つまりドアをロックしただけの状態では窃盗犯たちの絶好の餌食になってしまうのだ。
手元にキーがなくてもなぜドアが開いてエンジンが始動したのかというと、近年のクルマには各部を担当するいくつものコンピュータが搭載されている。それらのコンピュータは単独で稼働しているのではなく、ボディに張り巡らした配線で繋がっており、CAN通信によって連携しながら各部を制御しているのだ。
そのいくつもあるコンピュータのなかでトヨタやレクサスの主力車種は、左ヘッドライトの裏にヘッドライトコンピュータが装着されている。左フェンダー内のフェンダーハウスを外せば、このヘッドライトコンピュータが見えてくる。ここのCANラインに特殊な機器をカプラーで繋いで操作すれば、ドアが開いてエンジンが始動するのだ。
特殊な機器は海外の通販サイトで販売されており、誰でも購入が可能。そしてレクサスLXやランドクルーザーなどのSUVは車高が高く、フェンダーとタイヤの隙間が広いので、特殊な機器をヘッドライトコンピュータに繋げる作業がしやすいというワケだ。したがってトヨタ&レクサス車で何の対策も施さずに駐車場に止めておくのは、ドアをロックせずにキーを車内に置いたままにしておくのと同じこと。窃盗犯に目を付られてしまうと簡単にクルマを持ち去られてしまう。