ポルシェを代表するモデルになったボクスター
2021年の世界新車販売台数は過去最高の30万台を記録したという、ドイツが世界に誇るスポーツカーメーカー「ポルシェ」。そのうち内訳はSUVのマカンやカイエンが多くを占めますが、今日までポルシェが続いた真の立役者は、じつはボクスターなのです。当時のポルシェの状況と初代ボクスターがポルシェにもたらした影響を振り返ってみましょう。
90年代の販売台数は年間3万台規模まで落ち込んでしまった
今でこそ順風満帆という感じのポルシェですが、1990年代初頭は経営危機にありました。おもな市場であった北米での販売不振や高コスト体質、そして911だけに頼っていたような状況がおもな原因でした。今も昔も911はポルシェを代表するモデルですが、当時は911だけが売れているという状況でもあり、911が売れなくなるとポルシェはピンチに陥ってしまうという最悪の状況が現実になってしまったのです。
もちろん、それまでポルシェもなにも対策をしてこなかったわけではありません。エントリーモデルとして924や968といったコンパクトFRモデルやGT志向の強いV8の928などを、1970年代から1990年代初頭にかけて世に送り出していました。しかし、1990年代初頭の年間生産台数はポルシェ全体で現在の1/10以下である3万台にも満たなかったと言われ、そのうち911が2/3を占めていたそうです。FRポルシェは商業的には成功と言えず、経営危機を迎えることになります。
911以外でフラット6を搭載し話題となったボクスターコンセプト
そんななか、1993年のデトロイトモーターショーでポルシェはボクスターのコンセプトモデルを発表します。ポルシェの新しいエントリーモデルと位置付けられたこのコンセプトカーは、「ボクサー(水平対向)&スピードスター」を由来とする造語でボクスターと命名されました。もう後がない、まさに背水の陣でポルシェが造り出したモデルです。
これまでの911以外のポルシェはFRレイアウトに直列もしくはV型エンジンを搭載するモデルでした。ですが、ボクスターはミッドシップに911と同様の水平対向6気筒エンジンを搭載するという、これまでの911以外のポルシェでもっとも911に近いモデルとも言えるコンセプトカーです。このコンセプトカーはデトロイトモーターショーで話題となり、ポルシェは自信を持って量産モデルの開発を進めることとなります。