甲乙付けがたいカスタムの究極の選択
どっちを選ぶべきかを検証
クルマをカスタムするときに大きな選択を迫られることがある。例えば車高を落とす場合であれば、ダウンサスで落とすか、車高調で落とすかなど、同じローダウンでも複数の選択肢がある。だからこそカスタムは楽しく面白いワケだが、ここではクルマのカスタムで直面する究極の選択方法を、そのメリット&デメリットとともにお届けしよう!
カスタムの究極の選択01:エアロパーツ編
「メーカー統一かブランドミックスか?」
ドレスアップの定番であるエアロアイテムの導入。基本的にはフロント/サイド/リヤとパートごとに分かれラインアップされていて、ブランドを決めてトータルでセットアップしコーディネイトするのがセオリーになっている。金銭的な問題で一気に全部は施せなくても、まずはフロントを装着して、お金ができたらリヤ、そしてサイドと同じメーカーのもので統一する。あえて少しずつセットしていき、それぞれの段階を楽しむって人もいたりする。いずれにせよメーカーを揃えることで、バランスの良い一体感が得られる。これが間違いのないやり方だ。
一方でそんなメニュー通りの手法では物足りなく、人とは違うアプローチで個性を主張したいという考え方もある。こうした趣向を凝らすために行うことがブランドミックスという手法だ。あえてリヤスポイラーだけほかのメーカーのアイテムを導入したり、すべて違うメーカーで自分なりのコーディネイトで仕上げたり。こうすることでワンメーカーでは成し得ない独自のフォルムが生まれ、類稀なインパクトが手に入る上級テクニックとなる。
確かにブランドミックスは成功すれば自分らしさが強烈にアピールできて大きな満足度が得られる。しかし、失敗すればチグハグさが際立ち、ズッコケたスタイリングになってしまう。見た目だけでなく各ブランドの考え方なども鑑みて施すべきだ。正直言って何度も失敗して得た経験値、それに持って生まれたセンスがものを言う。やり過ぎは厳禁。張り切りすぎるとデザインの辻褄が合わなくなって、とっ散らかる可能性が高まるから注意が必要だ。
ではどうしたらブランドミックスが上手くいくのだろうか? 以前に老舗プロショップに聞いたところ、肝はブランドエンブレムで、その扱いを疎かにしてはいけないと力説していた。アクセントとして別ブランドのアイテムを導入した場合にはエンブレム類は消し去り、1台のクルマのなかでそれをカブらせることは避けるべきだという。いくらバランス良くまとまったとしてもエアロ同士で異なるエンブレムに気付けば興醒めしてしまうからだ。
カスタムの究極の選択02:ローダウン編
「エアサスかハイドロサスか?」
1度使ったらやめられないと言われているエアサス、そしてハイドロ。低められた車高で走行中に急なスロープや大きめな段差に遭遇したとしても、慌てることなく車内からボタン操作で車高がせり上がり、何事もなく走り抜けていける。大切な愛車のフロントまわりやフロアへのダメージを解消してくれる、頼りになるアイテムだ。
どちらも車高を自由に調整できる基本的な機能はほぼ同じながら、決定的な違いがある。それが車高を変化させるために使うものだ。エアサスはそのネーミングからも分かる通り空気を活用。一方のハイドロはオイルを用いる。空気とオイル。異なるふたつの特性がアイテムのキャラクターを決定づけている。
エアサスは乗り心地がとにかくソフトで、細かい衝撃も吸収してくれる。対してハイドロはオイルという粘性がある液体を使っているため、程よい手応えを感じる。しかしオイルを供給するためにポンプ用のバッテリーが必要になるし、オイル漏れなどにも気を配らなければならない。
1番の違いは車高を下げるときだ。エアサスは空気を抜くのだが、それは大気へと解放する。だからその都度減っていく。一方ハイドロもオイルを抜くのだが空気と違ってタンクに戻しているので量は一定だ。そのため、ふたたび車高を上げる場合でも瞬時に対応できる。もちろんエアサスも空気を溜め込むタンクを備えてはいるが、容量には限界がある。頻繁に上下動を繰り返すと余裕がなくなり、つねにコンプレッサーで空気をタンクに送り込まなければならない。それが作動のロスにつながる場合がある。
カスタムの究極の選択03:ボディメイク編
「オールペンかラッピングか?」
クルマのボディカラーを変える手段はオールペンかラッピングかに大別される。どちらも用途は似ているが、ふたつは別物だということを理解しておくべきだ。
塗料を使って仕上げるオールペンに対して、ラッピングは塗装と見紛うほどの仕上がりなのに専用のフィルムをボディに貼り付けるだけで完成するため、とても手軽に思える。しかし現実はそう単順に比較はできない。クルマの大きさや、形状の複雑さ、使うフィルムのグレードによっても差が出るが、小さめなクルマでもボディ全体をラッピングすれば80万円前後はかかってしまう。ドアの内側などにも施せば、当然料金も跳ね上がる。オールペンも下地の仕上げ方などで費用には大きな差が出るが、それでもこの金額はベーシックに塗装で色を変えるパターンとそれほど差がない印象だ。
しかも日頃の手入れや保管状態に気を使えば、一生その色が楽しめるオールペンに対して、ラッピングには寿命がある。フィルムメーカーでは3年ぐらいでの張り替えを推奨している。フィルムそのものの耐久性も考慮しなければならないが、そればかりでなく下地になっている塗装面への影響も見過ごせない。ラッピングを剥がすときボディにノリが残ってしまったり、塗装まで一緒に剥がれてしまったりといったトラブルが出る場合があるからだ。塗装面にダメージを与え出す前に剥がすことを忘れてはならない。
もちろんラッピングには、そんなネガティブな部分を帳消しにするほどのメリットだって存在する。オールペンだとクルマを売るときの査定で事故車扱いになってしまう可能性があるが、元に戻せるラッピングならそんな心配はいらない。艶や質感は塗装と遜色ないばかりでなく通常のカラーリング以外にも、メッキやレザー、さらにはサビやカーボンなどをイメージした奇抜な雰囲気にも柔軟に対応できる。しかも飛び石に対して塗装よりも剥げにくい。
一生付き合えるオールペンに対して、元に戻せるラッピング。どちらもその特徴が長所であり、短所な面でもあったりする。そこのところを深く理解しつつ、自分の性格、つまりは飽きっぽいか、新し物好きかなどを鑑みての決断が、失敗のない色変えに結びつく。
カスタムの究極の選択04:フロントマスク編
「リップスポイラーかフルバンパーか?」
顔つきを変えることはドレスアップの常套手段のひとつである。効果が約束されると言っても過言ではないだろう。確実にクルマの雰囲気が変わっていく。ごくオーソドックスな手法としては、フロントリップの導入とバンパーをそっくり交換してしまうメニューが挙げられる。
手軽さで言えばリップが有利ではあるが、換えた感を重んじる場合は俄然フルバンパーが猛威を振るう。だとすればドレスアップ的にはフルバンパータイプのほうが偉いのだろうか? 現実にはそんな単純に優劣は付かない。そこがドレスアップの奥深さである。大前提としてクルマいじりの魅力はインパクトだけでは語れないものだ。控え目なさり気なさを大切にすることもあり、人によって重要視するテイストは異なるものだ。
まずはリップの魅力、それは素性の良さを崩さないことに尽きる。クルマのキャラクターを決定づけるフロントフェイスのラインをほぼ活かしつつ、ボトムエンドだけにアクセントを導入することで違和感のないイメージチェンジが行える。そのクルマのフォルムが大好きならば、あえて大技を導入することなく、微調整感覚で手を入れるのはアリだ。リップのなかにはバンパーの形状に沿って自然な感じでボリュームを加えるタイプや、ローダウンでの路面との接触を回避しやすい薄いフラップタイプ、さらには最初からダメージを受けることを想定した衝撃に強いラバータイプなどが選べる。
一方のフルバンパータイプはクルマのイメージは一変する。それが最優先項目である。デザインの工夫に加えてノーマルにはなかったダクトを追加したり、ガッツリ開口部を広げたり、さらにはサブランプを導入したりと、あらゆる手法を活用して造形されている。当然ボディに合わせて塗装もしなければいけないし、フィッティングには手間はかかる。しかしノーマルでは味わえない独自のスタイリングが手に入る。
どちらがいいかはクルマとの向き合い方や、好みで判断するしかない。余計なことかもしれないがノンエアロという選択肢もある。大いに悩んで答えを出そう。