じつは合皮張りのコンビシートは有利
そして足腰の弱った高齢者がクルマのシートに座る際の盲点が、シート座面の沈み込みだ。健常者であれば、ある程度座面がたわみ、ふんわりお尻が沈み込むソファ感覚のかけ心地を好み、快適と感じるケースも多いはずだ。逆に足腰の弱った高齢者からすれば、お尻が沈み込んだ分、立ち上がり性が悪くなり、足腰に負担がかがることもある。
そこで考えたいのが、ファブリックシートと合皮(あれば本革シート)シートの選択だ。ご存じのように、多くの合皮や本革シートはファブリックシートより表皮の張りが強く、体重によってはたわみ量、沈み込み量が少ない。体重65kgの筆者でも、本革シートで体重によって座面が絶妙にたわみ、お尻が沈み込み、心地よいホールド感あるソファ感覚のかけ心地が得られる国産車は、日産ノートオーラぐらいのものなのだ。
だが、足腰が弱った高齢者は、むしろ表皮の張りの強いシートのほうが座りやすく、立ち上がりやすいはずで、車種にもよるが、あえて合皮、本革シートを選んだほうがよかったりする。直近の印象では、新型ステップワゴンの場合、エアーはファブリックシート専用で、ファミリーミニバンに相応しい座面のたわみ、沈み込み、ソファ的快適感、そしてシートバックのフィット感は文句なし。
一方、スパーダ以上の合皮コンビシートは、体重65kgの筆者でも、表皮の張りが強く感じられ、お尻の沈み込み量も少なめとなるからだ(とくに3列目席で差が大きい)。そのかけ心地の違いから、今回のテーマとしては、ステップワゴンの場合、スパーダ以上の合皮コンビシートが足腰の弱った高齢者向きのシートと言えるのだ。合わせて、降車時のお尻の滑りやすさ(横移動)=降車性の良さの点でも、シートサイドがファブリックよりお尻を滑らせやすい合皮張りになるコンビシートは有利だったりする。
あわせて、センターピラーにあるアシストグリップも、車種によって高さや長さが異なる。新型ノア&ヴォクシーのように、アシストグリップがドーンと縦長で、下半分が子どもでも握りやすい細さに工夫されているアシストグリップは、握力の弱った高齢者も握りやすくうってつけである。ミニバンやプチバン選びの際は、そうした点に着目して、足腰の弱った高齢者に最適な1台を選んでほしい。