文明の利器を活用して何が悪い!? ポータブル電源は「あり」か「なし」か問題
アウトドアに限らずポータブル電源の需要が急速に高まっているようです。オートメッセウェブ編集部の担当者は、「キャンプや車中泊にはポータブル電源が欠かせないっすよ!」と、まるでポータブル電源が万能選手かのように豪語しています。確かに最近のキャンプではポータブル電源を使っているキャンパーを多く見かけるようになりましたが、個人的には「キャンプ=ポータブル電源」という安直な考え方は如何なものかと思うのであります。日常生活においてIT化が進み、パソコンやスマホが手放せなくなっているのは確かなことであり、その便利さを否定する気は一切ありません。
しかし、ことキャンプという趣味の領域での快適性は「正義」ではなく、ポータブル電源を使って快適なキャンプを楽しみたいと思うのは自由であり、不自由を楽しむためにオールドスクールのキャンプを楽しみたいと思うのも自由。キャンプは「楽しむこと」が唯一の正解であって、誰かの意見を押しつけられることや、流行を追わなければダメということはないからです。
正直、ポータブル電源に拒否反応を持つオールドスクールを愛する人たちも、原始人のように棒を擦って火を起こし、土を練って食器を作ることから始める人は存在しないワケで。焚き火台やバーナー、テント、LEDランタンという「文明の利器」を取り入れていることを考えれば、今後はポータブル電源が選択肢のひとつとして浸透していくことは否めません。
原理主義派は否定するけれどキャンプスタイルを変えてくれる必須アイテム
一般的にポータブル電源が認知されているのかと言えば、そこには「防災」や「災害時」という用途があり、その延長としてキャンプでの普及が見込まれています。単純に考えれば、焚き火さえできれば暖が取れ、お湯が沸かせて料理もできます。そうなるとバーナーやコンロは必要ないわけですが、雰囲気を重んじるキャンパーにとって「電気で快適さを求めるならホテルに泊れよ」の極論に達してしまいます。
ボクもポータブル電源を使うまでは「キャンプに電気なんて必要なのかなぁ」と感じていましたが、実際に使ってみるとその便利さに驚きました。基本的にはバックアップ的に使うことで普段のキャンプが便利になるという感じではありますが、もっとも便利に感じたのが寝苦しい夜間に家庭用の扇風機がビュンビュンと使えたこと。オールドスクールのキャンプでの泣き所であった熱帯夜を軽減してくれたことに、心が奪われたのであります。
コロナ禍が少し落ち着きを見せたさ今日この頃ですが、まだまだ予断は許されません。リモートワークやリモート会議などで会社に行くこともなく、自宅で仕事ができる時代が続いています。そうなると家を仕事場にするのではなく、ポータブル電源があれば「キャンプ場=仕事場」という考えも成立してくるはず。自宅ではなくキャンプ場でも仕事ができるのなら、ストレスを感じることなく仕事がこなせる可能性は大きいのです。
ポータブル電源をキャンプへと持ち込み、昼間はパソコンとスマホを使って仕事、夜は焚き火を眺めて古典的なキャンプを満喫する。そんな生活を実現してくれるのがポータブル電源なのかもしれません。実際、ボクのように自宅で原稿を書く仕事であればどこでも仕事ができるので、リモート用のレンタルオフィスやレンタルスペース、カラオケボックスを借りるくらいなら、思い切ってキャンプ場を仕事場にしてしまうのもアリかもしれません。
ポータブル電源があればもはやセルフグランピングも可能になる
キャンプの選択肢としてグランピングを目指す人であれば、ポータブル電源は大きな味方になってくれるはず。ホットプレートやトースター、ジューザーミキサー、電気ケトル、冷蔵庫の電源としても使え、プロジェクターを持ち込めばタープをスクリーンにして映画も楽しめます。寒い日には電気毛布や電気コタツも使うことも不可能ではありません。さらにテントをIoT化すれば「アレクサ、電気を付けて」や「アレクサ、モーツアルトのピアノソナタをかけて」なんてことも可能になるのです。まぁ、これを良しとするかは自分次第ではありますが、ポータブル電源はキャンプのスタイルを大きく広げてくれることは間違いなさそうです。
ポータブル電源の人気が高まっていることもあり、世の中には数多くのブランドが雨後の筍のように生まれ、そのなかには怪しい製品も存在します。ポータブル電源は決して安い買い物ではないので、信頼性が高くしっかりと保証が付けられたものを選ぶことが大切です。
ポータブル電源を選ぶときには自分が使用する電化製品の出力数を把握し、十分な容量を持つ機種を選んで下さい。車中泊の場合、扇風機や電気毛布を車内で使うのであれば500Wh以上のものを選ぶことをおすすめします。容量を示す「Wh」は、電力(W)を時間(h)で計算したもので、500Whの容量があれば100wの電化製品を5時間(h)使えますよということ。電気毛布は弱モードで約3Wh、強モードで約30Whですから、500Whの容量があれば弱モードで166時間、強モードで16時間使える計算になります。
キャンプブームによって独自の進化を遂げている日本のキャンプ事情。ポータブル電源の登場により、その進化は急速な歩みを見せています。この進化を受け入れるのか、それとも拒否するのかはアナタ次第。まぁ、どんな形であれキャンプはマナーとルールを守り、自分自身が楽しむことが重要なのです。