硬ければ硬いほど良い……わけではない!
ボディ剛性アップチューンというと、乗り心地が良くなったりハンドリングが良くなったりと、デメリットなく走りがグレードアップすると思われがちだが、じつは落とし穴もある! ボディ剛性にもバランスが必要なのだ。
剛性アップはデメリットとも表裏一体
タワーバーやフロア下面の補強バーなど、補強パーツは人気のジャンルだ。確かな効果がありつつ、価格は数万円から装着できる。そして、その効果は侮れないものがある。フロアのサブフレームとボディの締結を高める系の補強バーだと、明確にステアリングに対する応答が良くなり、ステアリング操作が重く感じられることもある。
メリットだらけに思える補強チューニングだが、じつはデメリットもある。それは剛性が上がりすぎること。昔からレースの世界では「雨が降ったらタワーバーを外せ!」というのはよくある話だ。
たしかに、タワーバーを装着するとフロントのしっかり感が増し、ステアリング操作に対して高い剛性感が出る。しかし、路面の摩擦が低い濡れた状態だと、ステアリングを切ってもタイヤがそのまま真っ直ぐに転がりやすくなってしまう。いわゆるアンダーステアになりやすい。
タワーバーを外すと、左右のタイヤがバラバラに動く感触になる。それによって、片方のタイヤがグリップの限界になっても、もう一方が持ちこたえてくれるような感触になり、タイヤが滑りにくく感じられるのだ。
メーカー純正は意図的に「ゆるさ」を確保している
自動車メーカーではそういったフィーリングも含めてボディ剛性をコントロールしている。そのため、ドアまわりなど、何枚もの鉄板を重ねて溶接する「スポット溶接」は、意図的に間隔を開けている。よく、スポット溶接の間隔が開いているのはコスト削減で溶接箇所を減らしていると言われるが、そういった意味で力を逃すために意図的に間隔を開けていることもある。
補強パーツではそのバランスを崩すことになるので、無闇に入れればすべてがよくなるとは限らないのだ。どこに入れたらどんな風に効くかをマネージメントしないと、むしろ乗りにくくなってしまうこともあるのだ。