グループAマシンと歴代GT-Rの共演に感動
「コクピットに収まった瞬間、あの時代に戻るよね。メーターまわりも当時のまま。『これだよ、コレ!』って感じ」と土屋。昨年、オーストラリアでもR32のグループAマシンに試乗する機会があったそうだが、コクピットをはじめ、エンジンなども現代風にモディファイされていたのだという。タイサン号のエンジンは当時のグループA仕様ではなく、より市販車に近いN1レース仕様のRB26DETTに換装されているものの、チタン製の直管サイド出しマフラーから発せられるサウンドは“咆哮”と表したくなる音色で、グループA全盛期を思い起こさせる。
「走行ペースはゆっくりだったけど、久々にステアリングが握れて本当に楽しかった。中回転くらいまでの音はグループAそのもの。ただ、少し上まで回すとちょっと違うかな。グループA仕様のエンジンはもっと暴力的だったから」
今回、土屋が駆るSTP TAISAN GT-Rはたった1台きりのデモンストレーションランではなく、R’s Meetingで行う歴代GT-Rによる「パレードラン」の車列に加わる形で参加車両と一緒に走行してもらった。さらに、土屋がドライブするタイサン号が2列に分かれたパレードランの中央に入り、約150台の参加車両が土屋の横に並びながら抜いていくという方式とした。
「あの演出はすごい! ハコスカ、R32、R33、R34、R35と歴代GT-Rがズラっと並んで。ほかのイベントではこんなのなかなかできないと思う」と興奮気味に語る土屋。
もう一度“国さん”がGT-Rに乗る姿を見たかった
イベントとはいえ、往年のレーシングドライバーに「ゆっくり走って抜かれてください」というリクエストをするのはいささかはばかられたが、快く引き受けてくれた土屋。しかも、走行後はパドック側のピットからイベント広場まで自走でドライブしてもらい、来場者で溢れかえるR’s Meetingの会場内を通過してステージ前まで移動してもらった。パレードランの参加者のみならず、イベントに来場していただいた皆さんにも〝ドリキン土屋圭市〞が駆る本物のグループAのオーラを肌で間近に感じてほしかったからだ。本誌のワガママなリクエストに応えてくださった関係各位には、この場を借りて感謝の意を表したい。
イベント終了後、土屋はポツリと次のような言葉を発した。
「ここにハコスカGT-Rを駆る国さんもいたらすごいよね。俺も見たいよ、国さんが走る姿を」
土屋のみならず、ファンにとっても高橋国光×土屋圭市の師弟による〝GT-R使いの共演〞は夢のような話だろう。実現できるかどうかは確約できないが、本誌としてもR’s Meetingでの新たな目標を据えることができた。
「R32からGT-R伝説が復活したんだなって。今から30年も前にあれだけの技術を世界に出して、それが今のR35GT-Rにも続いている。俺にとってR32は本当に特別な存在。一生忘れることのできない1台だね」土屋は結びの言葉としてそう語ってくれた。(文中敬称略)
※この記事は2019年10月1日発売の「GT-R Magazine 149号」に掲載したものを元に再編集しています)