ライトウェイトのピュアなスポーツカーを目指したRX-7
バンケル・エンジン、いや東洋工業の偉業に敬意を表して、ここからはロータリーエンジン(RE)と呼ぶことにして話を進めていきましょう。最初に紹介したように、REを最初に搭載した市販車はコスモスポーツでした。
当時としては圧倒的なパフォーマンスを発揮していたこともあってコスモスポーツの車名が決定されたようですが、これはスポーツカーというよりも、豪華なグランツーリスモ。そういえば東京モーターショーに出展した際には、広島の本社から松田社長自らがドライブして上京した、というエピソードも伝えられています。
一方、1978年に登場したサバンナRX-7は、サバンナを名乗ることからサバンナRX-3(国内販売に際しての正式名称はサバンナGT)の後継ともされています。ですが、RX-3がサバンナにカペラのエンジンを搭載した高性能なツーリングカーであったのに対して、RX-7はピュアなスポーツカー、より詳しく言うなら2シーターのライトウェイトスポーツカーでした。
1967年にデビューしたコスモスポーツからでも11年、開発が始まった1960年からは20年近い歳月が経過していましたからREの開発(熟成)度は遥か遠くまで到達していました。1960年代後半から1970年代初めにかけてのレース活動でクルマを鍛える術も分かってきたのでしょう。
とくに空力に関しては並々ならぬ配慮がなされていたようで、国産の市販モデルとしてはトヨタ2000GT以来となるリトラクタブルヘッドライトを採用。またコンパクトなREのメリットを生かしてノーズの高さを抑えたデザインを採用するなどして、Cd値(空気抵抗係数)もわずか0.36と当時のレベルとしては素晴らしい値を達成していました。
もうひとつ、REならではのパッケージングの妙が、エンジンの搭載位置。もちろんフロントエンジンの後輪駆動だったのですが、エンジンがフロントアクスルの後方、いわゆるフロントミッドシップに搭載されていたことも、素晴らしいハンドリングを生むうえでは大きな要因となっていました。
サスペンションも、フロントはマクファーソンストラット式でしたがリヤは凝ったデザインとされていました。リジッドアクスルをコイルスプリングで吊るリジット式でしたが、アクスルを前方から4本のリンケージで支えて前後方向を決め、上下方向はワットリンク(あるいはワッツリンクとも。いずれも考案者のジェームス・ワットに由来)で支持。これも素晴らしいハンドリングを生む要因のひとつでした。
スタイリングはロングノーズにショートキャビンとファストバックを組み合わせたもので、Bピラーより後方はガラスエリアで構成され、中央部分はガラスハッチとして開閉が可能となっています。ガラス部分のみの開閉で“敷居”は高かったのですが、軽い手荷物の出し入れには便利なレイアウトとなりました。
この初代RX-7にはモデル後期にターボモデルが追加設定されたり、また世界ラリー選手権に向けてグループB仕様が登場するなどトピックも満載でした。