インジェクションはコンピュータ制御で綿密に噴射する
カタログのスペック欄に燃料供給装置という項目がある。現在は電子制御燃料噴射装置などと記述があるが、これはいわゆるインジェクションのこと。一方、その昔はキャブレターが主流だった。これらの違いはインジェクションは各種センサーからの情報を、コンピュータが処理して最適なガソリンの量を噴射するもの。一方のキャブレターは、完全アナログでスロットルを開けると予め決められた規定量が噴射されるという方式。デジタルとアナログで、大雑把な例えだが、スプレーと霧吹きぐらいの差がある感じだ。
現在はキャブレターは完全になくなってしまったと言っていいが、その理由は大雑把な制御しかできないため、排ガスのコントロールで大きなハンディとなることが一番大きい。あとはメンテナンスの問題もある。ただし、旧車の世界ではキャブレターが主流だし、そこに魅力があるとも言える。「やっぱりキャブっていいよね」的なことはよく耳にするが、一体その魅力はどこにあるのだろう。
ダイレクトな走行フィールはインジェクションとは別物!
まずは見た目だろう。混合気が上から下に抜けるダウンドラフト、横となるサイドドラフトというようにさまざまな形があるし、ツインチョークと呼ばれるふたつのキャブがひとつになったようなタイプもある。それが装着されているのを見てもかなりの存在感だ。とくに6気筒といった多気筒エンジンだと、ズラリと並んでいるのはかっこいいし、さらに12気筒のスーパーカーともなれば絶景、壮観だ。
そして一番の魅力というのは走りだ。インジェクションはきめ細やかな混合気コントロールができるのはいいが、レスポンスに欠けるのも事実。その点、キャブレターは開けたらダイレクトに混合気が流れ込んでくるのが、体感的にも感じることができる。同一車種で、キャブレターとインジェクションを比較するのは難しいが、ロングセラーのバイクだと可能だ。試しにアクセル、短くアオリ続けてやると、キャブレターはワンワンと反応がいい一方、インジェクションはボワーンボワーンとキレが悪い。
ダイレクトというのは吸気音にも違いが出るもので、キャブレターのほうが大きくてダイレクトな感じ。ファンネル仕様にすると、アクセルを開けた途端にカボッという音がするし、あけ続けるとボッーという音が響き渡る。これらは走りに直結していて、まさに鼓動であり、クルマとの一体感を存分に楽しめるなど、ファンを虜にする部分だ。