気になるポイントを現代流にアレンジして楽しむ
チューニング好きとしては、そんな気になる部分に手を入れて自分流に仕上げている。制御はフルコンであるHKSのVプロを活用。エンジンのオーバーホールも兼ねて埼玉のフロントロウでセットアップしてもらった。もちろんフラップのエアフロは取り去り、ホットワイヤーも使わずにアクセル開度で空気量を予測する、スロットルスピード方式を選択。なんとも原始的なシステムながら、これがすこぶる調子が良い。アクセルとエンジンが直結しているようなレスポンスだ。
Vプロは任意の回転数で空燃比のズレが補えるフィードバック制御も使えるが、フロントロウ的にはバルブタイミングが狂わない限り空燃比はズレないという考え方で、それよりも空燃比を測定するセンサーのトラブルで空燃比がズレてしまうことのほうが厄介だという。だからフィードバックは使わない。
それでも標高2000mオーバーの空気の薄い場所に行ってもいたって普通に走れる。麦草峠のテッペンあたりで実験的に再始動を試みたが、ほんのわずかクランキングの時間が長かったが、始動してしまえばハンチングさえも起こらない。フルコンはしっかりとセッティングすれば旧車には心強いアイテムになる。
エキゾーストにもこだわり改良を重ねた
エキゾーストは長野のアルトラックにお願いして左右等長のエキマニ、そしてマフラーを作ってもらった。リヤのアンダーカバーがそのまま使えて、なおかつ金型をおこして製作した専用のヒートエクスチェンジャーまで取り入れているシンメトリーエキゾーストシステムと名付けられた力作だ。
作り込みが美しいだけでなく機能面も高めている。なにしろ燃焼室の排ガスを効率よく大気に排出すると同時に、すかさず吸気を引っ張って取り込む感覚が体感できる優れものだ。秀逸な排気パーツの仕事ぶりをまざまざと見せつけられた。
音質は964らしからぬ高音が効いた刺激的なサウンドにまとまっている。しかし最初は勇ましすぎてこもり音が気になり、対策を依頼。なるべく効率を落とさない方法としてレゾネーターを追加して、無事に不快感を取り除くことができた。
すでに走行距離は20万kmオーバー。決して速くはないが、スピードとは異次元な魅力で気持ちが昂る。最新のポルシェに興味がないわけではないが、仮に購入できるお金ができたとしても、多分964の飛び石の補修やヘタリ気味のシートのリフレッシュに回すだろう。付き合いだして四半世紀以上になるが、少しも飽きない奇跡のクルマだ。