日が昇ってからは目まぐるしい展開に
日が昇った時点で、GT Proクラスのトップは#92のポルシェが、同AmクラスではTFスポーツの#33アストンマーチン・ヴァンテージAMRがレースをリードし、両クラス間のギャップは4ラップとなっていた。だが朝の太陽が次第に高くなってくると、GTクラスやLMP2で、大きなクラッシュには至らないが単独のインシデントが多発。GT Proクラスでは首位にいた#92のミカエル・クリステンセンが前輪のバーストにより大破したフロントセクションを新たに付け替えるのに手間取り、代わってトップに立った#31のフェラーリ488、#64コルベットらに28ラップの遅れをとった。ドライバーの集中力に厳しい時間帯であることが察せられる。
スピンやオーバーシュートで目まぐるしくレース・オーダーが入れ替わる一方で、GTクラスのポルシェの処理に手間取ったマチュー・マクシヴィエールのアルピーヌ#36が、ポルシェ・コーナーでコースアウト、左フロントを小破させてしまう。この修理でアルピーヌは再度ポジションを大きく落とし、29位に転落してしまう。
この30分後、ユノディエールではGT Proクラスのトップを守っていた#64のコルベットがAFコルセのLMP2マシン#83と接触、ガードレールに叩きつけられるハードなクラッシュを演じてしまう。かくしてコルベットがC7以来、ふたたびクラス優勝を遂げる野望は潰えてしまった。
かくしてトップに立ったのは、レース前半は苦しい展開が続いていた#51 AFコルセのフェラーリ488エヴォだ。だがすぐ背後には#91のポルシェ911RSR-19が数十秒差で迫っており、ひとつ間違えばひっくり返る、そんな展開が続く。ちなみにコルベットのクラッシュの原因として#83のAFコルセには3分間のピットストップによるペナルティが命じられ、公式にチーム・コルベットに謝罪を表明した。
荒れたレース展開のなかでも圧倒的な速さを見せたトヨタ
とはいえ荒れたレース展開は収まらず、LMP2トップのJOTAレーシング#38をずっと追っていた#31のWRTのマシンが、ミュルサンヌの出口イン側へフロントをハードヒット。決勝を通じて初めてのセーフティカー導入となった。セーフティカー中断は約20分にわたり、11時過ぎにレースが再開された。しかし荒れ模様の中でもトヨタの2台は淡々とペースを保つどころか、セーフティカーが退いてグリーンフラッグ直後の11時過ぎに、2位を走る#7の小林可夢偉は3分27秒762のファステストラップを記録した。
3位を走行するグリッケンハウス#709はトップの#8トヨタとピットイン回数では並ぶものの、4ラップのビハインドとなり、トヨタの牙城を崩すのはいよいよ難しく見えてきた。190km/h以上でないと電気モーター、つまりハイブリッドの恩恵にあやかれないルール変更のなかで、トヨタはスキのない速さを見せつけ、ここ数年、勝てているチーム特有の安定感すら漂う。
平川 亮がル・マンで総合優勝した4人目の日本人に!
残り25分、ブランドン・ハートレイがドライブする#8と、#7のホセ・マリア・ロペスが、最後の燃料補給を済ませてピットアウト。2台の差は2分10数秒。このふたりがそのままアンカーとして380ラップ目に24時間のチェッカーを受けた。最終的にトヨタから3位のグリッケンハウス#709とは5ラップ差、#708とは10ラップの差という結果に。
総合5位・LMP2クラス首位を走るJOTAレーシングがそこから1ラップ差となり、さらに20ラップ差を挟んでGT Proクラス優勝は#91ポルシェ911、GT Amクラスは#33のTFスポーツのアストンマーチン・ヴァンテージAMRが343周の末に優勝を果たした。今回のトヨタGRの5連覇により、#8を駆った平川 亮は日本人としてル・マン24時間で総合優勝を果たした4人目のドライバーとなった。