大蛇らしいスタイリングを具現化しながら
事細かな法規をクリアしたことに感服
当初はコンセプトカーであったオロチだが、市販化に向けて走り出すと、その先にはさまざまな制約がつきまとう。それはタイヤサイズであったり、シャーシ、ブレーキ、衝突安全の基準などをクリアすることが求められたのだ。
もちろんヘッドライトやテールライトも事細かな法規に則ってデザイン、配置する必要があり、それでありながら、コンセプトカーで衝撃を与えた“あのオロチ”の威厳と風格をスポイルさせることはできない。しかし、この点も各社の協力と光岡の執念によって市販化を実現。その意味でオロチは、光岡の情熱と日本の技術力と、多くのサポート体制があってこそ誕生させることができた。
筆者は何度かステアリングを握る機会を得たことから、このクルマに対する周囲の目も理解している。攻める走りはしていないので限界性能はわからないが、決して走らせにくいこともなく、普通に誰でも走らせることができるクルマであったことは間違いない。そしてオロチに乗るということは、いい意味で衆目にさらされるということ。光岡がこのオロチに対してファッション・スーパーカーという言葉を作り出したのだが、まさにそれが当てはまる。見事な割り切りであり、日本においてスタイリングだけで市販化されたモデルが、どれほどあるだろうか?
もちろん、注目される理由は、ただ低くて大きくて速そうなだけではなく、それは神話のオロチを連想させるスタイリングに帰結する。ヤマタノオロチの伝説を知らない人でも、日本人のなかで神聖なもとのとして生き続けており、その荘厳さを見事にスーパーカーとして具現化したのが光岡オロチなのだ。
ある種日本文化の象徴といっても
過言ではないオロチの存在感
2014年の生産終了後も何かと話題を集めた光岡オロチ。2014年にはエヴァンゲリオン・オロチ、2018年にはデビルマン・オロチを限定一台で抽選販売している。1000万円オーバーながら倍率は高く、今後はこれらのコラボモデルがオークションなどに出品されて話題になる日が来るかもしれない。日本の神話であるヤマタノオロチと、日本カルチャーの漫画やアニメとの親和性が高かった。
近年ではアメリカンテイストで話題となったロックスター(販売終了)や、納期待ちの列が続くSUVのバディが人気のメーカーだが、2014年に販売が終了したファッション・スーパーカー、オロチがあったことも多くのクルマフリークに知ってもらいたい。
■光岡オロチ(MSP1型)
○全長×全幅×全高:4560mm×2035mm×1180mm
○ホイールベース:2600mm
○トレッド 前/後:1725mm/1715mm
○車両重量:1580kg
○乗車定員:2名
○エンジン:3MZ-FE型V6DOHC 24バルブ
○総排気量:3311cc
○最高出力:233ps[172kW]/5600rpm
○最大トルク:33.4kg-m[328N・m]/4400rpm
○ブレーキ 前後:ベンチレーテッドディスク
○タイヤサイズ 前・後:245/45R18・285/40R18
○発売当時価格:1190万円〜(税抜)