「ル・マン・ウィーク」は一大ビッグイベント
TOYOTA GAZOO Racingが終始ワンツーを維持したまま5連覇という偉業を達成した2022年のル・マン24時間レース。盛り上がっているのはコース上だけではなかった。今年で第90回を数えるル・マン24時間を、現地のギャラリーたちはどのように楽しんでいるのだろうか?
車検&パレードランは市街地で行われファンとの距離も近い
レースはもちろん競技だけに結果は大事であるが、観客がスペクタクルを求めているのも事実。というわけでル・マン・ウィークは市街で行われる車検からして、賑やかだ。大聖堂をバックに最新のレーシング・マシンが並べられる様は、ゴージャスそのもの。柵で仕切られているとはいえ各マシンと観客との距離も近い。観客だけでなく出走ドライバーまで、セルフィーをキメていたりする。
出走するチームによる、街での顔見世興行という雰囲気が強い車検に対して、予選が終わって決勝前日に行われるパレードランでは、ドライバーに注目が集まる。当然、ポールポジションのチーム、そのタイムを叩き出したドライバーは、ひときわ目立つコールで紹介されるのだ。
地元のヒストリックカー・クラブによって供される色々なオープンカーに、1チーム3人のドライバーがリヤに一段高く座っている。チームにとっては大事なドライバーたちを人質を取られているような時間帯かもしれないが、地元の人々にはレーサーとの距離がぐっと縮まる瞬間。彼らの手から渡される・バラまかれるオリジナルグッズも、拾った数を競っているかのように、貪欲にキャッチする。
レース本番前のファンサービスとセレモニーも見どころ
レースも長いが、レース本番までのセレモニーもル・マン24時間は長い。16時スタートに対し、午前中にウォームアップを終えた出走車両とチームをグリッドに整列させた後、昨年の勝者からのトロフィー返還、グリッドウォーク、そして著名人たちによる祝福が寄せられる……といった具合だ。
今年のハイライトは、ル・マン総合優勝を4連覇中、今年は5連覇&5勝目のかかるトヨタが、粋な計らいで魅せた。現役を退きチーム・マネージャーとしてル・マン24時間に初めて望む中嶋一貴が、父親である中嶋 悟がル・マンでドライブしたトムス85Cをドライブし、トロフィーを返還したのだ。パドックの長さ分だけストレートを遡るという短いドライブではあったが、現地のトヨタ・ギークも大いに涙したことだろう。数年前までのル・マン万年2位を脱してついに勝利を重ね、WRCでも好成績を挙げているトヨタ。モータースポーツでの成功を下地に、欧州でもいよいよ愛されるメーカーに成長しつつあるのだ。
ちなみに今年、スタート前にグリッドから観客に姿を見せたのは、アンリ・ペスカローロやジェラール・ラルースといった往年の名ドライバーだけでなく、テニスのジョー・ウィルフリッド・ツォンガも。じつは彼はル・マンが地元というテニスマンで、満杯の観客席の視線を引きつけたのだった。