キャンプしながらBBQ、飲めや歌えやな人も多数
かくしていよいよ、土曜16時に24時間レースのスタートとなる訳だが、クルマで来てキャンプ、つまり車中泊やテントを張って過ごす人は少なくない。だが、コースを見下ろすような立地はモノが風で飛ばされたりでもしたら危ないので、テントを張る人たちはキャンピングスぺースか、コースサイドから遠い駐車場に限られているようだ。とはいえ、そうした観戦者たちは決まってBBQを楽しんでいるので、むしろ好都合。あんまりレシピや料理に凝るより、フランスのBBQでは定番のシポラータやメルゲーズと呼ばれるスパイス系ソーセージを焼いている匂いがそこかしこに漂う。
飲み物は当然のようにビール派も多いが、屋外でもワインという人もいる。サーキット最寄りのカルフール(巨大スーパーマーケット)では、とくにビール売り場が空になるほどだが、その原因は地元フランスの観客だけではない。この時期、ル・マンに大量に押し寄せるのは英国人やオランダ人やベルギー人たちで、たいていは宿泊代をケチる意味もあって、キャンパーが多い。
意外と少ないのが、今はワークス参加がGTクラスのポルシェに限られてしまったドイツ人。ポルシェのトップカテゴリー復帰が見込まれる来年は増えるだろう。それにしても、埃っぽいサーキットでいくらノドが乾くとはいえ、ビールを飲むために来ているグループもチラホラ、いる。これ見よがしに空きボトルを並べたり、愉快だが迷惑寸前の際どい観客も少なくない。そこがル・マン24時間独特の面白さでもある。
乗り物やファッションで応援&自己主張
そうした近隣の外国から自慢の愛車で来ている観客のなかには、自分でデザインしたスペシャル・デカールやロゴを施したクルマも多い。お勝手ペースカー仕様だとか、ひいきのドライバーやお気に入りメイクスの応援メッセージだとか何周年記念だとか、そういうセレブレーションを人前ですることに意義があるらしい。主張にパンチを込める欧州らしいやり方でもある。もちろん、クルマと関係のない、よく分からない仮装をしているような人も、たまにいる。
いずれ24時間レースならではの雰囲気を、親子連れで楽しんでいる人たちもことのほか多い。親子でお揃いのサングラスだとか、折り畳み式チェアを家族全員で抱えて大移動といった風だ。あるいは会場を見下ろす観覧車や、コースに合わせてヘリで1周してくれるといった有料サービスもある。富士の24時間では花火が夜に上がって好評だったが、24時間レース中のサルト・サーキットの人口密度ではちと難しいかもしれない。
またパドック隣に出現するヴィレッジには出走メーカーのホスピタリティのみならず、オリジナルグッズを販売するブースや屋外フードコートなどもあって、ポストコロナ&リベンジ消費全開……といわんばかりの盛況ぶり。レース展開にキリキリ舞いするだけでなく、モータースポーツを「気楽に楽しむ」という意味でも、24時間耐久レースはじつに間口の広いレースなのだ。