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もちろん古いけど色褪せない! 「やっぱりジウジアーロは天才だ!」と感じる「いすゞ117クーペ」の存在感

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TEXT: 原田 了(HARADA Ryo)  PHOTO: いすゞ自動車/原田 了/自工会/Auto Messe Web編集部

ベレットが目指したGTではなく豪華なグランドツアラーを目指した

 こうした状況でいすゞが打ち出した“次の一手”が117クーペでした。もっと正確に言うなら開発記号117の4ドアサルーンと2ドアクーペで、前者は1966年の東京モーターショーで117セダンとして初お披露目されました。翌1967年の11月にデビューしたフローリアン1600で、後者が本編の主人公、1966年のジュネーブショーで初お披露目され、同年の東京モーターショーに凱旋デビューを果たした117スポーツあらため117クーペです。いすゞ117スポーツ

 双子車、といっても単なるバッジエンジニアリングで2台が生みだされたのではないから、言うなれば2卵生双生児とも言うべき2台です。117クーペとフローリアンは、フロアパンを共有していて2500mmのホイールベースも、フロントがコイルで吊ったダブルウィッシュボーン式の独立懸架、リヤがリーフスプリングでアクスルを吊ったリジッド式というサスペンション形式も、両車には共通していました。いすゞ117クーペ

 ただしブレーキに関してはフローリアンが前後ともにサーボ付きのドラムブレーキだったのに対して、117クーペではフロントがサーボ付きのディスクブレーキへと“格上げ”されていました。サスペンションは、ベレットでは当初、リヤにも独立懸架を奢っていましたが、ダイアゴナル式スイングアクスルをコイルスプリングと横置きにマウントしたリーフスプリングで吊る基本スタイルは、コーナリング時にリヤサスが踏ん張ってロードホールディングを向上させる目的がありました。いすゞ117クーペ

 一方で、強いオーバーステアと癖の強いステアリング特性が、一般的なユーザーから敬遠される方向にあり、モデルライフの途中からコンベンショナルなリーフリジッドに変更されたのです。このような経緯もあり117クーペ(とフローリアン)では、コンベンショナルなリーフリジッドが当初から採用されることになりました。

 最後になりますが、117クーペの最大の特徴であり、最大のセールスポイントでもあるスタイリングについても紹介しておきましょう。デザインは当時、ジョルジェット・ジウジアーロがチーフデザイナーを務めていたカロッツェリア・ギアに依頼したことは先にも触れたとおりです。いすゞの企業風土が気に入ったのか、ジウジアーロはその後カロッツェリア・ギアを辞し、自らのデザインスタジオであるイタルデザインを立ち上げますが、その後もいすゞとの関係は続きました。イタルデザインの最初の大きな仕事は、アドバイザーとして117クーペの生産立ち上げをサポートすることだった、とも伝えられています。いすゞ117クーペ

 それはともかく117クーペは、いかにもジウジアーロらしいラインやデザイン処理が印象的な仕上がりとなっています。さらに2+2というよりも本格的な4座のツアラーとして、豪華というよりも上質なインテリアも大きく得点を稼いでいます。いすゞ117クーペ

 そんな117クーペですが、ほぼハンドメイドで仕上げられていた初期型と、機械によるプレス成形が可能となり量産化対応の手直しを受けた中期型、そしてヘッドライトが角形4灯式となった後期型という3種類に大別されています。いすゞ117クーペ

 どれを選ぶかは、あくまで個人的な趣向となりますが、どの117クーペを選んだとしても、美しいスタイリングの基本は共通です。そして半世紀以上も昔のデザインなのに今見ても古さを感じさせることもなく、その美しさには魅了されてしまいます。その辺りこそがジウジアーロの真骨頂、ということでしょうか。

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  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • 原田 了(HARADA Ryo)
  • ライター。現在の愛車は、SUBARU R1、Honda GB250 クラブマン、Honda Lead 125。クルマに関わる、ありとあらゆることの探訪が趣味。1955年、岡山県倉敷市生まれ。モータースポーツ専門誌の地方通信員として高校時代にレース取材を開始。大学卒業後、就職して同誌の編集部に配属。10年間のサラリーマン生活を経て90年4月からフリーランスに。モータースポーツ関連の執筆に加え、オートキャンプからヒストリックカーイベントまで幅広く取材。現在ではAMWに、主にヒストリー関連コラムを執筆。またライフワークとなった世界中の自動車博物館歴訪を続け、様々な媒体に紹介記事を寄稿している。
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