モータースポーツの新しいカタチとしてスタート
2022年5月14日、静岡県・富士スピードウェイにて男女ペアドライバーによって競われるMixed Genderクラスという新たな取り組みのレースが行われた。このレースを発案したのは、日本人初のル・マン24時間総合優勝者であり、「インタープロトシリーズ」や女性だけのレース「競争女子」など、純粋にドライバー同士を競わせる新たなレースカテゴリーを生み出している関谷正徳氏。男女ペアのレースを始めた経緯を関谷氏に聞いた。
Mixed Genderクラスってどんなレース?
まず、今回行われたレースを簡単に紹介。男女ペアで競うMixed Genderクラスは、富士スピードウェイで行われているFCR(富士チャンピオンレース)のVITA2時間耐久レース内のひとつのクラスとして開催された。Mixed Genderクラス以外にも性別の組み合わせを問わない総合クラスも混走で行われた。なお、富士でVITAの2時間耐久レースが行われるのは初である。
Mixed Genderクラスは男女1名ずつ、計2名で戦わなければならない。なお、スタートドライバーは女性ドライバーが担当することが決められている。
VITAは鈴鹿に拠点を置くWESTレーシングカーズ社製のワンメイクマシンであり、競争女子や鈴鹿クラブマンレースをはじめ、全国各地のサーキットでワンメイクレースが行われている。先代トヨタ・ヴィッツRSに搭載されていた1.5Lエンジンとミッションを、セミモノコックフレーム&スペースフレームの車体に搭載した、安全性能とコストパフォーマンスに優れたレーシングカーだ。
女性がもっとモータスポーツで活躍できる場を
関谷氏に話を聞くとMixed Genderクラスの実現は競争女子を始めてから考えていたそうだ。
「モータスポーツは身体を使うアスリートスポーツなので、男性と女性が同じ舞台で競うのは女性にとって不利があります。そのようなことを踏まえ、競争女子を始めました。でも、もっと女性がモータスポーツで活躍できる場を増やすにはどうしたらいいのかと考えた際、思いついたのがこのMixed Genderクラスです。男女ペアにすれば、女性ドライバーが走れる選択肢も増え、競争女子に単独でエントリーするよりもハードルが低くなると思ったのです」
「ですが、これをやろうと決めたときに、周りの皆が賛同してくれる訳ではなかっですし、考えを理解してもらうことが難しかったです。まずはレースを開催し、ひとつの形にした上で、どういうものか理解を広めていかなければとあらためて思いました」
こうして発案されたMixed Genderクラス、新型コロナウイルスの影響などもあり3~4年の準備期間を経て今回初開催となった。実際に耐久レースを戦った43台の内、15台がMixed Genderクラスとしてエントリー。
競争女子とFCR VITA、それぞれでトップクラスを走るドライバー同士というガチな組み合わせで勝ちを狙うチームや、夫婦ペアで参戦するチームなど、さまざまな男女ペアがエントリーしていた。しかもこのVITA2時間耐久レースで総合優勝したのは、Mixed GenderクラスでエントリーしたMixed Genderクラスのマシンが、男性のみの総合クラスよりも前でチェッカーを受けることになった。総合3位に着けたのもMixed Genderクラスの翁長実希・徳升広平組で、男女ペアレースの可能性を感じさせる開幕となった。
今後の課題と見えた可能性
このような決勝結果を聞くと滑り出し上々と思えるMixed Genderクラスだが、まだまだ課題は多いと関谷氏は語る。
「まずは勝ったことに対する賞賛や証。これを充実させなければならないと思う。それは賞金だったり世間からの注目だったり色々ありますが、勝利したことによるさまざまな対価、これがなければドライバーにとって魅力的なカテゴリーにならない。ドライバーやチーム、関係者にとって、もっと色々な意味で魅力的で参加したくなるようなカテゴリーにしなければならないと思いましたね」
そんな課題点とは反対にポジティブなものも見えてきたそうだ。
「実際に開催してみて、女性ドライバーの活躍の場が広がるという可能性をあらためて感じました。新しいモータスポーツの面白さがひとつ増えたと感じたし、新しいモータスポーツの見方も増えたことでしょう。有名なプロドライバーも参加してくれましたし、インパクトがあったと思います。インタープロトや競争女子も同じですが、自分に能力がある限りMixed Genderクラスをより良いものにしていくために活動していきます」
自身のアイデアと行動でモータスポーツの発展と新たな可能性に尽力している関谷氏。日本が世界に誇るレジェンドドライバーは今もなお、モータスポーツのために走り続けているのだ。
モータスポーツに今までなかった男女ペアというカテゴリー、Mixed Genderクラス。モータスポーツはほかのスポーツと同じく、身体を使う競技。それならばバドミントンや卓球などの男女ダブルスや、トライアスロンや競泳のように男女混合リレーと同じように、モータスポーツにも男女ペアがあって当然だとあらためて感じた。
【取材協力】
インタープロトシリーズ&競争女子公式HP
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インタープロトシリーズ&競争女子公式YouTubeチャンネル
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