ジープからグラディエーターが日本上陸!
ここ数年「ジープ・ラングラー」が新車販売台数の記録を更新し続け、日本での認知度は急上昇中だ。そして2022年からはジープのピックアップモデルとして誕生した「グラディエーター」が日本国内での販売を開始し、ピックアップトラックがブームになりそうな予感が漂っている(あくまでも予感……)。
ハイラックス以外はピックアップが根付かなかった日本
これまでにも数多くの乗用ピックアップモデルが生まれては消えて行った日本では、「ピックアップトラックは売れない」というのが定説であり、例外としては商用車として人気を博したサニトラ、ダットラ、軽トラック以外が定着することはなかった。現在はトヨタ・ハイラックスが唯一の存在であり、タイで生産されていた三菱トライトンが日本国内でも販売されたが現在は姿を消している。
輸入車としてはピックアップトラック王国であるアメリカから多くのモデルが輸入され、1990年代にはシボレーC1500が人気を博し、2000年代にはダッジ・ラムやフォードF150などが日本国内へと持ち込まれ、アメ車ブームに華を添えた。最近では北米仕様のトヨタ・タンドラや日産タイタンなどの逆輸入車が少数ながらも並行輸入され、一部のピックアップトラックファンを喜ばせている。
アメリカと東南アジアでは趣味車としても大人気
アメリカでは古き良き時代から、ピックアップトラックは商用目的とし活用されて来た歴史を持つ。最近ではSUVのカテゴリーとしても認知され、トレーラーハウスやボートを牽引する趣味のクルマとしても人気が高い。さらにアメリカでは「NASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズ」としてピックアップトラックのストックカーによるレースも行われ、数多くの観客を集めるビッグイベントとして成立している。また、アメリカだけでなく東南アジアでもピックアップトラックの人気は高く、若者たちが乗りたいクルマの代名詞になっているのも事実である。
日本メーカーも海外市場では多くのピックアップを売っている
あまり知られていないが日本の主要自動車メーカーは海外市場に向けて数多くのピックアップトラックを生産している。日産はフロンティア、ホンダはリッジライン、三菱はトライトン、いすゞはD-MAX、トヨタはタンドラやハイラックス、マツダはBT-50など、ラインアップにピックアップトラックを持っていないワケではない。
では、なぜ日本ではピックアップトラックを販売しないのか? その理由は文化の違いが大きく影響し、「ピックアップトラックが売れない」と考えているからだ。日本には高度経済成長時代から日本を支え続けた軽トラックが存在し、車両価格、維持費、経済性に優れていることから商用車としてピックアップトラックが入り込む余地はない。さらに積載容量が必要であれば2トン車や商用4トンなどのキャブオーバー小型/中型トラックがシュアを占めている。
遊びのセカンドカーを持つ余裕が日本でも育ってほしい
次に日本では「乗用車文化」が当たり前になっていることも大きな理由だ。最近、ようやくSUVという新たな文化が浸透し始めてはいるものの、人気のモデルはどれもが都市型SUVと呼ばれる乗用車ライクなものであり、本格的な4WDモデルとは一線を画している。ひと昔前にはステーションワゴンブームが一世を風靡したものの、ライトバンを思わせる商用車的なスタイルは日本の文化には根付かなかったのも、乗用車文化が大きく影響していることは間違いない。
さらに日本ではセカンドカーを持つ文化がなく、ピックアップトラックで通勤や家族の送迎、週末の買い物、帰省、冠婚葬祭までをカバーすることはできないのも大きな理由である。今後、日本にピックアップトラックを根付かせるにはセカンドカーを持てる経済性を備え、遊びのクルマを持つことに罪悪感を持たない心の余裕を育てることが必要なのかもしれない。