カーオーディオ・チューンの最新トレンド「DSP」
カーオーディオのイベントにエントリーするクルマは「DSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)」を使って調整したクルマが大半だ。なかにはDSPによる音の劣化を嫌って、あくまでもDSPを使わずにセッティングしてくる人もいるが、着座位置に対するスピーカー位置がいびつな車内で音楽を聴くにはDSPを使って音場をコントロールしたほうが断然有利だ。
そのため、6月5日に開催された「サウンドミートイン東日本いわきステージ」にブース参加したメーカー(インポーター)では、最新のDSPを用意して展示&試聴デモを行っていた。
車内という特殊な環境の音場をコントロール
ブースで見かけた機器を価格が安いものから順に紹介していくと、まずイース・コーポレーションのテントにあった「μ(ミュー)ディメンション」のDSP-680AMP V2(9万9000円/税込)。型番を見ればだいたい想像できるが、6チャンネル・パワーアンプを内蔵した8チャンネル・プロセッサーだ。
プロセッサー部のおもな機能はだいたい似通っていて、基本はタイムアライメント、イコライザー、そしてクロスオーバー・ネットワークの3つが搭載されていること。タイムアライメントは、各場所に装着したスピーカーの音が視聴位置において同時に耳に届くよう、それぞれのスピーカーの音にタイムディレイをかけて調整する機能。うまく調整することで、ホームオーディオのベストポジションで聴いているような、正確な音場がクルマの中で得られるようになる。
クルマは左右スピーカーの中央に座って聴くことができない、スピーカーの装着位置が限定されていてしかもバラバラなど、音楽を聴く環境としてはけっしていいとは言えないのだが、タイムアライメントを使うことで各スピーカーとリスナーとの距離差は補正できる。
イコライザーは、周波数特性をイコールにする(整える)もの。ホームオーディオでも、床や壁、天井などに音が反射して周波数特性が乱れてしまうため、反射パネルなどを用意してルームチューニングを行うのだが、狭い上にガラスやシートダッシュパネルなどのさまざまな障害物がある車内ではその比ではなく、周波数特性が大きく乱れてしまう。それを細かく補正して、特性を整えてやるのがイコライザーの役目だ。ものによっては、若干音質が劣化してしまうものもあるが、周波数特性のピークやディップによって聴きづらい音になってしまうよりは、イコライザーで補正して整った音に変えてあげたほうがよっぽどいい。
クロスオーバー・ネットワークは、高音用のツイーター、中低音用のミッドベース、超低音用のサブウーファーなど、受け持つパートが分かれたスピーカーユニットに、再生する帯域を割りふってやる役割を持つ。うまくセッティングすることで、音質をより高めることが可能だ。これもカーオーディオにとっては欠かせない機能のひとつである。
DSP-680AMP V2はこれらの基本機能を搭載し、しかもパワーアンプを6チャンネル分内蔵しているので、純正ヘッドユニットにこれを追加することでDSPの調整ができる。展示だけで実際の音は聴いていないが、これでうまく調整すれば、純正オーディオの音も定位感がばっちり決まったサウンドに仕上がることうけあいだ。
オンラインで音響の調整を自動でできるサービスも
ビーブレイドのテントには2種類の「mini DSP」なる製品が展示されていた。コンパクトで黒いほうがパワーアンプがないDSPのみのCDSP 8×12(28万4000円)、シルバーの大きめのものがパワーアンプを内蔵したハーモニーDSP 8×12(34万8000円)だ。このモデルの特徴は現在の多くのDSPが採用しているIIRフィルターではなく、直線位相が実現できるFIRフィルターを採用していること。周波数によって位相がずれないので、位相歪みが発生しない高音質なサウンドを実現できる。
またスウェーデンのDirac Research社のDirac Liveに対応しており、実際にマイクで測定した音響データをオンラインで送れば、Dirac社のサーバー側で高度な演算処理を行い補正データを送り返してくれる。そのおかげで、それぞれの車内に応じた適切な調整が簡単にできるというわけだ。実際に補正後の音を聴いてみたら、音場感がまだまだという印象だったが、位相ずれのない快適な音であることは確認できた。まだまだ改良の余地はありそうだが、ポテンシャルの高さを感じることができた。