今では4WDがサーキットでも速さを見せる!
昔は重いしアンダーステアで曲がらないといわれた4WD。オフロードコースやウェット路面ならともかく、一般的なサーキット走行と相性の悪い部分もあった。しかし、1989年にBNR32型のスカイラインGT-Rがデビューを果たし、さらにランサー・エボリューションやインプレッサWRXなども登場した。
当時のレースで最高峰だったグループAで勝つために作られたGT-Rは当然として、WRC(世界ラリー選手権)がターゲットだったランサーとインプレッサも、スーパー耐久レースから草レースまでサーキットでひとつの時代を作り上げる。この世代の4WDがオフロード以外でも活躍した理由はどんなことが挙げられるのだろうか?
後輪のスリップ量に合わせて前輪も駆動させるGT-R
GT-Rはベース車両のスカイラインが後輪駆動であるうえ、アテーサE-TSと呼ばれる電子制御の4WDシステムを採用。基本的には後輪だけを駆動させつつ、路面の状況などに合わせてトルクを前輪にも0:100~50:50の範囲で配分するメカニズムだ。アンダーステアを抑えつつアクセルワークで姿勢を制御する、FRと4WDのメリットを併せて享受できる画期的な機構だった。
後継のBCNR33やBNR34ではアテーサE-TSプロへと進化。R35になると車内から特性を変更できる横滑り防止装置、VDC-Rをはじめとする数々の高度な電子制御も採用され、もはや曲がりにくい4WDというイメージは皆無といっていい。
ランエボ&インプはしのぎを削り4WD性能に磨きをかけた
いっぽうランサーやインプレッサは前輪駆動車がベースで、おまけにフルタイム4WDなのでアンダーステアが強い傾向のはず。確かに初代ランエボは極端なフロントヘビーで、昔ながらの曲がらない4WDと変わらない。
ところが好敵手であるインプレッサと互いに開発競争を繰り広げた結果、5代目となるランエボVからはタイヤやブレーキの大容量化が行われ、ランエボVIIではACDやAYCという最新の電子制御システムを採用。圧倒的な旋回性能とコントロール性を手に入れ、排気量が上のマシンとも互角に渡り合えた。
インプレッサも同様で年を追うごとに4WD特有のネガティブさは減少し、WRX STIとなった現在もスーパー耐久のST-2クラスではランエボとしのぎを削りあっている。