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軽自動車初のハイブリッドもあった! 時代を先取りしすぎた「スズキ・ツイン」のこだわりがスゴイ

ツインの総生産台数は1万106台だった

割り切りまくったふたり乗りシティコミューターへの挑戦

 スズキ・ツインの販売期間は、2003年1月から2005年12月までの3年足らずと、じつは短いものだった。同じ軽自動車のダイハツ・ミゼットIIが、ひとり乗り(ふたり乗りもあった)ながら5年強続いたことを考えても、いかにあっさりと姿を消したかがわかる。また、スウォッチカー(スマート)のコンセプトカーが発表されたのは1995年、1997年欧州市場で発売、2000年に日本市場導入だったから、いずれにしてもツインは、スマートよりも後に市場に登場したモデルだったということになる。

 また輸入車の話ではあるが、せっかく日本市場にエアコンなどの準備をし導入されながらも販売上の苦戦を強いられ、わずか2年で撤退に追い込まれたフォードKa(カー/こちらは4人乗り)という例もある。奇遇だがツインの樹脂(原着)バンパーとフォードKaのバンパーは、デザインにはかなりの「差」があったが、扱い方には共通項があった。

まるでオモチャのようにファニーなスタイル

 ところでツインだが、このクルマは1999年10月の第33回東京モーターショーに出品されたコンセプトカーの「Pu3コミューター」がその原形。コンセプトカーではEVも想定されるなどしていたが、カタチそのものはほぼ生産型のツインそのもので、あえて差異を見つけるとすれば、おそらく視界要件を満足させるためだったのだろうが、生産型のツインではリヤクォーターウインドウが追加されていたこと。そしてドアパネルのビードの有無(「有」のコンセプトカーのほうがボディが引き締まって見えた)くらい。

 クルマの媒体でスタイリングについて「アレ」なときに、「スタイルは個人の判断、好み次第だが」などと書くが、ものすごく正直に書くと、初めてツインのスタイルを見たときに筆者は「昔ながらの女性イラストレーターが描いたファニーなクルマの絵のようだ」と思った。コミューター的なフレンドリーさを打ち出したのだとすればそうだったのだろうが、一般的なクルマとして見たときの決意のようなものは感じられないスタイルだったというべきか。

 ただしフォローもしておくと、ハイト系ワゴンのように軽自動車の寸法を目一杯に使ったスタイルではなかった分、たとえばリヤ側から眺めると樹脂バンパー部分がしっかりと「構え」を作り、その上にボディ色のキャビンがチョコンと乗っかって見えるアングルなど、コンパクトカーにありがちなひ弱さはなかった。

最小回転半径3.6mで小回り性能なら最強だった

 さてこのツインだが、当時のアルトをベースに作られた。特徴はとにかくコンパクトだったことで、全長はわずか2735mm、ホイールベースに至っては1800mmしかなかった。2シーターだからこそできた寸法だった訳だが、最小回転半径は3.6mと、これも群を抜く小ささ。ちなみにトヨタがiQを登場させた際、プレス向けの試乗会会場に最小回転半径(iQは3.9mだった)の小ささをアピールするため、スマート(同・4.1m)を持ち込みデモンストレーションしていた。軽自動車だから当然ながらiQよりツインのほうがより小回りが効かせられたのだった。

 またコンセプトカー「Pu3コミューター」と生産車とはスタイルはほぼ同じと前述したが、コンセプトカーでは機構の提案として、助手席側にスライドドアが採用され、横スライド方式のシートが備えられていた。スズキではアルトでもスライドドアの採用があったが、このツインこそ、コンパクトなサイズをさらに活かす機能としてそうしたユニークな仕様が実現されていれば、より存在感が増したのではなかっただろうか。

軽自動車に初めてハイブリッドを採用するも……

 存在感といえば、カタログではメインのキャッチコピーにもなっていたハイブリッド仕様が投入されていた点は、エンジニアリング的な意欲作だったといえる。システムはエンジンとトランスミッションの間に約80mmの厚みのモーターが仕込まれ、発進、加速、登坂時にモーターがアシストするパラレル方式で、もちろん市販の軽自動車では当時としては初のことだった。これにより当時の軽自動車ではナンバー1という34.0km/Lの10・15モード燃費も打ち立てた。

 だが、せっかく専用の鉛電池を新開発しつつも、ガソリンエンジン車との車重差はざっと130kgあり、それ以上にガソリン車とハイブリッド車の価格差(最廉価版が49万円に設定されたのに対して、ハイブリッドは129~139万円だった)はいかんともしがたく、ツイン終了よりも前には、ハイブリッド車は早々にカタログ落ちしていたのだった。

 折りしも軽規格のEVの登場が話題となっている今だが、ツインは相当な割り切りベースに作られたクルマだったとはいえ、2シーターのコミューターとしてのコンセプトは、今でも通用するものであるはずだ。「登場が早かった」とはよく使われる言い方だが、ツインのカタログを手にして眺めながら、これがもし今どきのEV仕立てのクルマだったら「ちょっとディーラーに見に行ってみよう」という気になるかもしれない。

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