付き合い方次第でディーラーが頼もしい存在になるカーライフのススメ
クルマの購入は労力がいる。それは世界各国共通で「ほかの人よりも値引きが少ないと心配……」とか、「販売店に行ったら無理やり買わされそう」など、クルマを買うことが手間だと考える人が多いと聞く。日本でもようやくネット販売やトヨタのKINTO(キント)などのサブスクによるクルマ所有も増えており、免許がないころからディーラーにカタログをもらいに行っていた筆者にしたら、信じられない世の中になっている。
これまで数々の新車と中古車を購入してきたが、知人や友人のお供で何十台もの商談にお付き合いしてきた経験から、自動車ディーラーとの上手な付き合い方を、筆者の経験を元にレポートしたい。もちろん、地域性もあるし、ディーラーのセールスやサービススタッフも人ぞれぞれで違いがあり、あくまでも参考程度に思っていただけると幸いだ。
ディーラーに馴染みのある知人を連れていき試乗するメリットは大きい
まずはじめに友人や知人の存在が大切になる。検討している車種(メーカ−)を取り扱う販売店を過去に利用したことがある友人・知人がいれば、商談に同行してもらうと良いだろう。クルマを売る側、つまりディーラーのスタッフ(セールスでもサービス担当でもOK)も、顧客の知人であれば一見のお客さまとは違うと判断するだろうし、「購入してくれる可能性が高いのでは」という思惑から、値引きなどの条件面で敷居が低くなりやすい。
また、一見のお客さまが試乗を希望した場合、助手席にセールス担当者が座り、あらかじめ決まったコースをテストドライブすることになる。しかしこのような状況だと緊張して思うように走ることができず、結局、クルマの乗り味を思うようにチェックできなかったりする。
ところがディーラーとの付き合いがある友人・知人が一緒であれば「自由に乗ってきてください」と、セールス担当者が同乗することなく、コースや時間を細かく指定されることなく試乗できる場合もある(それをいいことに長距離・長時間の試乗はNG)。ただし以前、試乗中のクルマで法定速度を大幅に超過して事故を起こしたというニュースが報道されると、それ以降はディーラー側もコンプライアンスを重視して、誓約書にサインさせるなど、昔に比べて自由な試乗が難しくなっている。
ただし、友人や知人が同行することで運転を同行者に任せて、自分は後席に座り乗り心地なども確認できるといったメリットもある。さらに窓がどれほど開くのかなどの快適性についても細かくチェックできるので、気になるクルマの良い点と悪い点をしっかりと確認することが可能になるのだ。
値引きは買ってもらうことが前提であることを忘るべからず
単刀直入に言うと値引きばかりを求めるのは逆に損をすることもある。例えば「雑誌やネットで○○万円の値引きは狙いたいと書いてあったから、その金額なら買う!」というのは決して悪くはないのだが、最初の見積りすら提示されていない段階で、大幅値引きを要求するのはセールスにとっては気分のいいものではない。理由は、購入するかどうかの手応えすら判断しかねるお客さまに対して、セールス担当者が大幅値引きを提案することは難しい。「購入してくれるのなら値引きも頑張ります!」というのがセールス担当者の本音なのだ。
同様にA社とB社のクルマで迷っていて「B社はこれだけ値引きしてくれる」と主張しても、購入意思がどこまで本気なのかがわらないお客さまに最大限の値引きは無理筋というものである。
さらに、バイヤーズガイドで「最後にこのオプションをねだろう」と書かれていることがあるが、それは必ず購入する前提の“最後のお願い”だからこそ通用するのであって、いずれもある程度商談を進めるなかで引き出せるのである。
裁量も大きく百戦錬磨のセールス担当者が多い輸入車ディーラー
とくに輸入車ディーラーの場合は、余程特別なモデルではない限り日本車よりもセールス担当者の裁量(値引き)が大きいと言われている。しかも輸入車ディーラーのスタッフは日本車ディーラーよりもいい意味で転職が盛んで、渡り鳥と呼ばれるさまざまなブランドの販売店を渡り歩いている人が多く、いろいろなタイプの顧客を見てきている。例えば新規で来店したお客さまが輸入車慣れをしているかどうかや、なにをご所望なのかを見極める、確かな目を持っていることが多い。
また、輸入車の場合は1台売ったら、その後も何台も同じディーラーで購入してくれるお客さまが多く、優良顧客を紹介してくれることが多いというのも特徴だ。それはセールス担当者にとってはありがたく、売り上げのベースになっているセールスもいるほど。となれば、優良顧客のためにできる限り最大限の条件を提示しようという志向が働くのは当然のことで、セールス担当者とお客さまの間にはwin-winの関係が成り立つというワケだ。
輸入車の売り上げは意外にも平日に稼げることが多い
そして某プレミアム輸入車のセールスに聞いた話だが、「平日はディーラーにいるようにしています。いつ誰が知人を連れて来店されるかがわりませんから……。なので土日は休んでも大丈夫ですね(笑)。うちは一見さんはほとんど来ないので、平日のゴルフ帰りなどに寄ってくださるお客さまが来店するタイミングが重要です」と言う。
ただし、そのようなプレミアムブランドでも手ごろな価格の廉価モデルが発売されると「土日も出勤ですよ。○○が発売されてから、流れが変わりました。紹介がメインなのは変わりませんが、初来店のお客さまも無視できないので大変です……」と言う。しかし輸入車の場合は、依然として友人や知人の紹介が売り上げにつながることが多く、過去に何台も購入してくれてさらに優良顧客を紹介してくれるお客さまが目の前にいると、やはり中途半端な値引きはできないそうだ。
車検やメンテナンスもディーラーを有効活用すべし
さらにクルマを購入したあとのディーラーとの付き合い方にも触れておきたい。日本には厳密な車検制度があるため、自動車関連業者が一時的に使うことがある仮ナンバー車は別にして、車検を通さずに公道を走らせることはできない。つまりクルマを買うということはそのディーラーと長く付き合うことになる。
これはかなり個人的な意見になり反論もあるかもしれないが、日本車でほぼ壊れることがない最初の3年目や5年目の車検はディーラーで行い、トラブルが出始める3回目や4回目の車検をユーザー車検や格安車検で済ませている人が意外にも多いこと。これが不思議でクルマが疲れてきたころだからこそ、真摯に愛車に向き合ってメンテナンスしてくれるディーラーに行くべきだと考えている。
もちろん、経年数や走行距離がかさんでくると車検後のトラブルを回避するために、予防的なメンテナンスとして、多少劣化したパーツの新品交換を奨めてくるサービス担当者がいるのは確か。ただ、それは「ボッタクってやろう!」という悪巧みではなく、車検後の2年間をノントラブルで過ごしてほしいという本心であると理解するほうが正しい。
とはいえ、車検はどうしても出費が大きくなるし、そこでディーラーのサービス担当者と常日頃から密にコミュニケーションを取っておくことで、要交換の部品と次回の車検時で問題ない箇所を精査でき、出費を一時的に抑えることも可能になる。つまり、遠慮せずに率直な意見をぶつければ、それに応えてくれる場合がほとんどで、良くも悪くもディーラーを「使う」ぐらいの気持ちで遠慮しないことが大切だ。
セールス担当者との良好な関係が困ったときに役立つ!
また、知人からこんな話を聞いたことがある。その知人が出先でパンクしてしまい、量販店でタイヤ交換すれば安く済ませることができるけど、安心を求めて馴染みのセールス担当者にパンクの旨を伝えたという。すると、パンクした場所まで1本のタイヤを持って臨場して現場で交換。後日、パンクした箇所に応急処置として装着したタイヤから、新品タイヤに交換するだけで済んだそうだ。
そのとき、時間のロスを最小限に抑えることができたし、溝のある新品から少し減っただけのパンクしていない3本のタイヤの空気圧を調整してもらい、ABSの作動に支障が出ないように調整してくれたそうだ。つまり、ディーラーでのメンテナンス費用は少し高くつくことがあっても、本当に困ったときに頼れるディーラーとの信頼関係をお客さま自身が築いていくことも大切なのだ。
値引きも大事だが真摯に対応してくれるセールス担当者との出会いも大切
国産車も輸入車もひとつの販売店で多くの車種を取り扱っている現在、それを利用しない手はない(クルマを買うのが面倒な方には手間が増えるだけだが)。例えばトヨタであれば、ひとつの都道府県に複数の販売会社があり、そのどれもが近所にある場合が多い。
前項で、買ってくれるかどうかわからない一見のお客さまに、大幅な値引きを求められてもそれに応えるのは難しいと書いた。少し矛盾してしまうのだが近隣に同じメーカー系列のディーラーがいくつかある場合、自宅から一番近い店舗だけではなく、生活圏内にある同じメーカー系列の複数の店舗を回ってみて、見積りを取ることも重要だ。ただし、この場合は一番大きな値引きを引き出すためではなく、自分と相性の良さそうなディーラー(セールス担当者)を探し出すことがおもな目的だ。
例えば同じトヨタの販売店で店舗の外観が一緒でも、実際にディーラーに足を運んでみることで、それぞれに雰囲気が異なることがある。また売り上げを稼ぎたいがゆえに、圧が強めの押し売りするようなセールス担当者もいれば、「もし○○○(他メーカー)のクルマが気になるのであれば、そちらでも見積りを取ってみてください!」と、親身になってくれるセールス担当者もいる。
ほかにも、ひとまず見積りだけもらおうとディーラーに足を運んだら、「まぁ、一旦試乗してクルマを見てください!」と勧めてくれたり、商談が長時間になったときに気の利いたタイミングでお茶のおかわりが自然に出てきたり。さらに、「来週であれば試乗車が用意できます!」などの気遣いを見せられると、『あっ、この人からクルマを買いたい!!』となり、その後、同じセールス担当者と末永いお付き合いにつながることもある。
もちろん、誰もが少しでも安くクルマを購入したいので、複数のディーラーを回りおおよその値引き額が見えたら、気が合いそうなディーラーで「○○万円引いてくれるのであれば、今日契約します!」(もちろん無謀な値引き額はNG)と言うのがベターだ。
とはいえ最近は、世界情勢の不安や半導体不足などで新車の在庫が不足気味で需要と供給のアンバランスから販売店は強気だ(値引きを引き出しにくい)。平時とは異なり少しでも安く買いたいというのは難しい時代になっているのも忘れてはならない。