新車をオールペンすると事故車扱いになるというウワサは本当か?
「オールペンは事故車扱いになる可能性がある」と聞かされ、なんともドッキッとした思い出がある。“実際のところどうなのか?”と気になったので調べてみると、その発言には言葉足らずなところがあったようだ。どこが言葉足らずだったかと言えば、比較的新しいクルマでオールペンを行うと、なぜ施工したのかが追求されることがあるようだ。理由はわざわざ新しいクルマを塗装し直すことが不自然だと疑われるからで、徹底的に調べられて、思いもよらぬダメージが発覚しまうといった注意喚起と、後悔しないように多少大げさに「事故車のように査定が低くなる」ということを伝えたかったのだと解釈することができる。
そもそも事故車かどうかという査定はなく修復歴の有無で評価
正確にはクルマを売るときにオールペンが行われた事実が発覚しても、事故車扱いにはならない。しかしマイナス査定になることは否めないというのが正解だ。そもそもプロの査定士は基本的に「事故」というフレーズを使わない。それは意味合いがとても広いからで、修復歴の「あり」「なし」で評価される。査定士はクルマを買い取るときに、1番いい状態を5点とみなしてそこから0.5点刻みで減点し評価していく。
走行に悪影響を与えない修復は減点が少なく、逆にクルマの骨格とみなすフレームの修正は減点が大きくなる。とくに溶接を行うと鉄に熱が入るので錆を誘発しやすくなり、減点が増していくのだ。また、内装もチェックされ、汚ればかりでなく不快な臭いなども減点の対象になるのだ。
塗装されたボディカラーやクオリティによって査定評価が決まる
オールペンの査定は色によっても違ってくる。基本的には元々のボディカラーでの塗り替えは減点が低く、持って生まれた本来の色を尊重している。あえて人気色にして減点率を抑えるというやり方もあるようだが、これは査定士が買い取ったあとに高く売れるかどうかということを考慮した評価である。もちろんオールペン作業のクオリティの違いによっても査定は違ってくる。
例えば、元の塗装の上から塗るのか、塗装を剥がして下地からしっかり整えて塗るのかでも査定評価は大きく異なる。それは塗装の上から塗ると古い塗装面と新しい塗装面との間に不純物が侵入しやすく、それが経年によって表面に浮き出たりすることがあるからだ。
オールペンの履歴がなくても塗装の劣化が激しいと減点は大きくなる
極端に言えば査定士がオールペンだと確認できなければ減点の対象にはならない。ドアやボンネットの内側、それにフロントガラス周辺のモールをずらして、マスキングテープなどを使ったときの痕跡として、塗装のほんのわずかな厚みの違いや艶の状態などをしつこいぐらいに確認する。しかし、それでもオールペンしたと判断できなければ減点のしようがない。現実にはそのようなクルマにはなかなか遭遇することはないのだが、それほど完璧な塗装であれば新しく購入したオーナーも不満はないだろうという考え方だ。
逆に言えばオールペンをしていなくても塗装の状態で減点される場合があるということだ。それは紫外線などが原因の経年劣化で起こりがちな現象で、丁寧で小まめな洗車とボディコーティングといった日ごろのお手入れで差が出る項目である。
また、塗装関係の特殊な作業に加修というものがある。新車の納車前にボディの気になる部分に手を加えて修復をわからなくする行為で、国産車では品質管理が行き届いていているのでその心配は少ないが、輸入車のごく一部のブランドでは見受けられるようだ。つまり日本の神経質な基準に合わせるための対策である。
万が一加修が発覚したら泣き寝入りするしかない!?
この加修は、納車直後に発見することは難しく、経年していくことで発覚することがあるから厄介だ。もちろんパッと見では確認できないのだが、光を当てる角度を変えたりしてチェックすることで、加修箇所が見えてくる場合がある。もちろん加修は隠されたままというのが大半だ。
しかし加修跡が見つかれば、残念ながら減点の対象になってしまう。もし新車の保証期間中に見つけたのなら、ディーラーからメーカーに交渉して再度粗を隠すように補修する場合もあるようだが、購入金額の一部を返すということは一切ない。理由はそれが加修によるものか、オーナーが後から付けた傷の補修なのかの判断が難しいからで、実際には加修をメーカー(ディーラー)が認めることは非常に稀のようだ。
ちなみボンネットやトランク、それにドアなどを外しただけならば減点にはならない。しかし“なぜ外したか”は徹底的に調べられる。その結果、例えばチリ合わせのために取り付けボルトを緩めたので、それで工具をかけたボルトの頭の塗装が剥げた程度であればセーフということだ。