本気で走らないと叱責されるじゃじゃ馬
「ホンダS2000/AP1型/1999年発売」
ここからはじゃじゃ馬ぶりも強烈だったモデルをお届けしよう。それがホンダのFRオープン2シーターモデルのS2000だ。なかでも初期モデルのAP1型は、2Lながら最高出力250psを8300rpmで発揮(レブリミットは9000rpm)するF20C型エンジンを搭載。クルマとしての性能はどこもかしこも素晴らしいと評価できるものであったが、とにかく運転手の怠慢な運転を許容してくれないクルマだった。
筆者は当時、E46型M3と初代ロードスターを所有していたのだが、この両車の良いところをひとつにしたようなS2000に過大な期待を寄せてしまったことが間違いだったのか、残念ながら人馬一体になれなかった。それは筆者の運転スキルの問題もあったのかもしれないが、S2000はアクセルの踏み方やステアリングの切り方まで指示してくるような、ドライバーよりクルマのほうが上位な印象。市街地では大人しい優等生だったが、ワインディングを走らせると「このヘタレ! アクセルは床まで踏めよ!」とか「なんでシフトアップするんだよ」、「違うだろう、曲がるときはこうステアリングを切れよ」と叱られているようなクルマであった。
エンジンレスポンスからスタビリティまで乗用車のソレではなく、レーシングカーを走らせているようであり、ヘタな操作に対して終始怒られているような強迫観念に駆られて運転させられていた。
しかしAP2型の最終仕様で2.2L化されたタイプSを試乗してみると「これは欲しい!」となるのだから面白い。初期型の気難しさは感じさせず、自分の好きなように走れる万能性は素晴らしく、ホンダのFRスポーツは安泰だと感じた。エアロは少々派手に感じたものの、現在でもこのタイプSを見かけると、オーナーの方が羨ましく思えるほどだ。
悪魔的なミッドシップ軽カースポーツ
「オートザムAZ-1/PG6SA型/1992年発売」
最後はオートザムAZ-1。この愛らしいデザインのミドシップ軽カースポーツは、さまざまなメディアで指摘されているとおり、高速走行に技量が求められるクルマだった。雨の日の首都高は怖くて流れに乗るのが精一杯だったし、普通に走らせる場面では問題はないのだが、道路の微妙なアンジュレーション(波打を打ったようなうねりのある路面)でも挙動が変化し、時間がない撮影中の移動などで神経をすり減らしながら走らせたことを覚えている。
見た目は可愛いのにガルウィングドアを持ち、720kgの軽量ボディでパワフルなF6A型インタークーラーターボエンジンは自主規制いっぱいの最高出力64psを発揮(64psでは収まってなかったとの都市伝説も語られているが……)。要求される技量はやはり当時のスーパーカー級と言えるほどで、おそらくチューニング次第では2Lターボ車もカモれる実力の持ち主だった。