ディーラーでもらえる喜びが味わえなくなるのか……
カタログがなくなる!? 昨今、かつての2000年問題以上に由々しきこととして多方面で取り上げられている(筆者だけが取り上げている!?)、“紙のカタログが廃止となる問題”は、少し前にトヨタなどで販売店にそういう旨の通達があったということから、いよいよ本格化していくのだろう。
もちろん今はデジタルカタログなど、メーカーのホームページを覗けば、新型車のカタログの閲覧やダウンロードは可能だ。しかし、たとえばディーラーのショールームでカタログをタブレットで「どうぞご覧ください」と見せられるのと、「ちょうどホヤホヤの最新版が届きました!」と紙のカタログを手渡されるのとでは、どちらのほうがいいか?
価値観は人それぞれだろうが、筆者はいまだに紙のカタログ派で、受け取ったらそのカタログにシワをよせたり折ったりしないよう大事に持ち帰って、家でも何度もジックリと眺めたいと思う。そして、特別に気に入ったクルマのカタログだったら“見る用”と“保存用”に2部は確保しておきたい……とさえ思う。
ところで今回は、そんな紙のカタログについて、今までにこんな印象的なカタログがあった……と思いつくままに取り上げてみたい。
高級車に多かったハードカバーのカタログは満足度高し
まず手にした時のズッシリとした重み、手応えといえば、やはりハードカバーの厚口カタログだろう。ハードカバーのカタログは、やはり高価格車に多く見られる。日本車では、トヨタ・センチュリーやセルシオ、日産・プレジデントやシーマ、フーガといった上級車系がそう。トヨタが2000年に発売したオリジンのような特別なクルマの場合にも、ハードカバーでカタログが作られる例があった。
写真のグリーンの表紙がその現物だが、じつはこの写真の撮影中、仕事部屋に乱入してきたまだ生後4カ月という我が家の柴犬に、ご覧のとおり大事な表紙の端をカジられてしまうというハプニングが……(涙)。
ハードカバーはこだわりのスポーツカー系でも例が見られる。2002年、2年振りの復活を遂げたZ33型フェアレディZの半透明のケースに入ったものや、ケースに跳ね馬が付いたフェラーリのものなども。歴代のポルシェもコンパクトサイズながら、たっぷりと分厚く読みごたえのあるカタログが車種ごとに用意されていた(“た”と過去形にしたのは、最近はめっきりと入手の機会が減り、直近の存在は未確認のため)。
輸入車はデザインもこだわったものが多かった
こだわりということでいえば、輸入車だがフィアット500やBMWミニのカタログは、眺めていてもじつに楽しい。2008年に導入された最初のフィアット500のカタログ(本国仕様)はリングノート状の仕立て。なかにセルロイドにボディストライプだけが印刷してあるページがあり、それをボディの写真に重ねると、ストライプを装着した状態を確認できたりした。
一方でBMWミニのカタログも初代のR50時代から、ショールームのCIとも周到に統一され、星の数ほどのオプションパーツが相当たくさん掲載されており、眺めるだけでも楽しい。限定車だったが、ガレージの写真のシャッターを開けるとなかから飛び出す絵本ばりにミニが現れる……そんな童心に帰った楽しみ方を体験させてくれるページもあった(その画策にハマって筆者はそのミニを買ってしまった)。
そのほかに体験型というかシール方式としてはVWゴルフなどの例が。オプションのアルミホイールがシールになって用意してあり、選びたいホイールのシールを剥がしてゴルフの写真に貼れば、そのホイールの装着イメージがわかるというもの。
同じようにメーカーオプションのスポイラーやストライプが別体のシールになって、カタログのポケットに入れられていたトヨタ・イプサムなどの例もあり、自分で選んで貼ることで、パーツの装着イメージを掴むことができた。ちなみにVWゴルフのカタログは手元に実物があるが、1部しか手持ちがなく勿体ないので、筆者は実際にシールを剥がして貼ることなく保存している。
車体色に合わせて表紙の色を変えたこだわりモデルも
カタログで珍しい例としては、すでに生産が終了してしまったVWザ・ビートルでは、何とボディ色分の表紙の色だけ違えたカタログを用意した例があった。揃えたくなる性分の筆者はもちろん全色をいただいて保存しているが、中身はまったく共通で、かなり手間ひまかかった作り方だったと思う。
表紙の色が変えられた例ではほかにもマツダのNAロードスターの例があり、改訂版ごと、あるいはマイナーチェンジごとに輪番(?)で表紙の色が別のボディ色に変更。限定車のリーフレットでは、当然ながらその限定車のボディカラーが表紙の色になっていた。
クルマのカタログはその時代ごと、メーカーごと、車種ごとのカラーが反映されているところが眺めているだけでも楽しい。さらに紙のカタログでは、紙の質感とか真新しい印刷の匂いなども含めた記憶として、いつまでも心のなかに残るものだと思う。それがウェブで閲覧可能なデジタルカタログになった場合、利便性は高くとも、タブレットやPCの電源を落とせば消えてしまう儚さが少々さみしい気がする。