新車のようにレストアできてもタイヤまでは……
レストアで頭が痛いのがタイヤだ。痛い点はいくつかあるが、まずは見た目。タイヤは性能もさることながら、トレッドやサイドウォールのデザインも重要なポイントで、簡単に言ってしまえば、最近のタイヤはスタイリッシュすぎ。旧車に履くと、けっこう浮いた感じになることも。話題になった女優、伊藤かずえさんのシーマレストアは非常にレベルが高いものだったし、部品メーカーの協力もあって新品部品も多く使われていた。しかし、タイヤは現在のもので、レストア担当者に聞いたところ、「こればかりは仕方がないですよ」と苦笑いされたなんていうこともあった。
しかもタイヤはゴム製品だし、高速で走る車体を支えなくてはならず、性能も重要。丸い黒い輪っかを作るだけならできるかもしれないが、タイヤとしての性能を確保するのは基本的には無理だ。そもそも旧車の時代はバイアスタイヤが主流で、ラジアルタイヤはあってもスポーツカー向け。しかもオプションだったりするので、なおさら現代では再現しにくい。そうなると見た目が浮いてしまったとしても現代のタイヤを履くしかない。
現在では当時のタイヤが復刻されているものもある
それでもこだわりたいとなるとどうするか? 旧車のスポーツカーで当時履かれていたというか、憧れ的なタイヤはいくつかあって、ダンロップのCR88、通称“パッパー”やアドバンHFタイプDなどだ。以前はネットオークションや倉庫に眠ったデッドストックを探し出して、イベントで展示するときだけ履き替えるなんていうことをしていたりしたが、最近は旧車向けのオールドタイマーモデルが復刻されるようになっている。ヨコハマであればアドバンHFタイプDなど。また、初代ロードスター用をブリヂストンが復刻して話題になった。
しかし、復刻ですべてまかなえられるわけではない。たとえば360ccの軽自動車に使われる超小径タイヤは今では軽トラすら履かないようなサイズだったりするし、大径ではスーパーカー系は苦労する。たとえばカウンタックだと、14インチの70偏平205サイズなんていう、現代の常識からすると冗談のようなサイズだ。
実際のところどうしているかというと、小径は軽自働車用などでなんとか流用。スーパーカー用は海外では少量生産のメーカーがある。また、海外では旧車の部品供給が日本よりも格段に良好だが、タイヤも同じで大手でもミシュランはなんと100年前のモデルでも生産していたりするし、ピレリも伝説のP7000を作っていたりする。
旧車に最新のタイヤを装着するとクルマが傷む可能性もゼロではない
海外の環境はうらやましい限りとはいえ、現状では現代のタイヤをうまく合わせていくしかないだろう。その際に気をつけないといけないのがグリップの問題で、現代のハイグリップタイヤを旧車に履かせると足まわりが負けてしまうこともある。旧車専門店のメカも、太いタイヤやハイグリップタイヤを履かせるとベアリングの寿命が確実に短くなるし、足まわり全体のガタも出やすくなるという。
当時と比べれば、現代の実用タイヤですらグリップは高いわけで、ストレスも含めてタイヤ選びを考えたい。闇雲にワイドホイール&ハイグリップや、引っ張りタイヤなどにするのは避けたいところだ。