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ブレーキの「対向キャリパー」は「片押し」の2倍利くわけではない! スポーツカーの多くに採用される真の理由とは

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TEXT: 加茂 新(KAMO Arata)  PHOTO: 加茂 新/Auto Messe Web編集部

  • ブレーキパッドをローターに両側から押し付ける対向式キャリパー

  • ブレーキパッドをローターに両側から押し付ける対向式キャリパー
  • キャリパーを交換したらマスターシリンダーとのバランスも大事
  • キャリパーの前後バランスにも留意したい
  • パッドの当たり面を均一にするため複数ピストンを持つことも珍しくない
  • コンパクトな形状の片押し式キャリパー
  • パッドの当たり面を均一にするため複数ピストンを持つことも珍しくない

制動力チューニングの肝となるのが「キャリパー」

 現代のブレーキシステムの要であるパーツが「キャリパー」。パッドをローターに押し付けるこの装置は、大きく分けると2種類になる。それが「対向式」か「片押し式」だ。スポーツカーでは多くが対向式を選択しているが、そのメリットとは果たしてどこにあるのだろうか?

一般的なクルマはシンプルな構造の「片押し式」

 ブレーキはペダルを踏むとマスターシリンダーがブレーキフルード(ブレーキオイル)を押す。その油圧によってブレーキキャリパーの中にあるピストンと呼ばれる円形の筒を押す。ピストンの先にはブレーキパッドがあり、パッドがローターに押し付けられて摩擦が発生し、速度が落ちる仕組みだ。

 一般的なブレーキキャリパーの多くは「片押し式」で、このピストンがキャリパーあたりひとつだけあるタイプ。そうなると内側のパッドしか押せないが、その反力で外側のパッドもローターに押し付けられる仕組みだ。

 片押し式にもメリットはある。それは外側パッドが外気に触れているので冷却性能に優れること。形状がコンパクトでホイールサイズを選ばないことなど。なので、軽量なスポーツカーや、BMWのMシリーズなども片押し式を選択している。

コンパクトな形状の片押し式キャリパー

パッドを均一にローターに押し付けられる「対向式」

 対する「対向式」は、ローターの内側にも外側にもピストンがあるタイプ。真剣白刃取り状態で両側からパッドを押すことができ、そのメリットはコントロール性の高さにある。

 ブレーキはいかにパッドを均一にローターに押し付けることができるかが重要。簡単なようだが、ローターは回転しているので、パッドはローターが入ってくる側は減りやすい。逆にローターが出ていく側のパッドはどうしても摩擦しにくく、そこでムラができてしまう。

 このパッドの当たり面が不均一になると、ペダルのタッチもグニュッとするし、制動力も安定しない。全面使えるときは利くが、均一に当たらないときは利かなかったりという不安定さが現れることもある。

パッドの当たり面を均一にするため複数ピストンを持つことも珍しくない

 対向式キャリパーだと両側からローターを押せるし、多くは複数ピストンを持っていて、4ピストン(pot)や6ピストン(pot)も珍しくはない。そうなるとパッドの押す場所によって掛かる力を調整できる。

 具体的には複数ピストンの場合、ローターが入ってくる側は小さめのピストンになっていて、出ていく側のピストンは大きい。こうすることで摩擦しやすい側の圧力を弱め、摩擦しにくい側の圧力を高めて、均一に減るようになっているのだ。なので、ブレーキキャリパーは左右それぞれ別で設計されているのだ。

 そこでハイパワーなスポーツカーでは対向式が選択されることが多い。よりブレーキを利かせるために大きなパッドを均一に押したいので、おのずとピストンがたくさんある対向式が選択されるのだ。

パッドの当たり面を均一にするため複数ピストンを持つことも珍しくない

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