先代モデルはヴェルファイアのほうが売れていたが……
アルファードは売れ筋の価格帯が400〜550万円に達するLサイズミニバンだが、2022年1〜5月の1カ月登録台数は約6100台であった。売れ筋価格帯が200〜250万円のシエンタやフリードと同等の台数が売られている。ところがアルファードの姉妹車とされるヴェルファイアは、1カ月平均登録台数が250〜300台だ。アルファードの5%程度しか販売されていない。
過去に遡ると、ヴェルファイアはアルファードよりも販売が好調だった。2015年に現行アルファード&ヴェルファイアが登場したときも、ヴェルファイアが多かった。
現行モデルのマイナーチェンジでアルファードが躍進
それが2017年12月に発表(発売は2018年1月)されたマイナーチェンジで、販売順序が変わった。アルファードは仮面のようなフロントマスクの存在感をさらに強め、2018年の1カ月平均登録台数は約4900台だ。ヴェルファイアの約3600台を上まわった。さらに2019年は、アルファードが約5700台、ヴェルファイアは約3100台で、両姉妹車の販売格差が拡大した。
そして2020年5月には、トヨタ販売体制が刷新され、国内のトヨタ全店で全車を買えるようになった。従来アルファードはトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店の取り扱いだったが、この区分が廃止され、トヨタ店やカローラ店を含めてアルファードとヴェルファイアを購入可能になっている。
その結果、アルファードは、すべてのトヨタの販売店で好調に売れ始めた。以前はヴェルファイアを専門に扱っていたネッツ店でも、アルファードに乗り替えるユーザーが増えている。
この効果により、2020年のアルファードの登録台数は、1カ月平均で7600台に増えた。2020年の中盤から後半は、コロナ禍に見舞われながらも、2019年に比べて33%増加している。逆にヴェルファイアは、1カ月平均が約1500台だから、2019年の半数以下になってしまった。
全店全車種取り扱いでアルファード人気が加速
ヴェルファイアがネッツ店の専売だったときは、この店舗と付き合いのあるユーザーは、デザインが多少好みに合わなくてもヴェルファイアを買った。しかし全店で全車を買える体制に変わると、もはや遠慮する必要はなく、車種を自由に選べる。アルファードの売れ行きはさらに増え、ヴェルファイアはますます減ってしまう。
つまり全店が全車を扱うと、人気車と不人気車の販売格差が拡大するのだ。これもトヨタの全店が全車を扱う体制に移行した理由のひとつで、姉妹車を筆頭に車種のリストラが可能になった。
2021年の改良では、ヴェルファイアのグレード構成は大幅に整理され、ゴールデンアイズII(現在はIII)と呼ばれる特別仕様車のみになった。上級、あるいはベーシックなグレードは、アルファードのみの設定だ。おそらく今後のフルモデルチェンジや大幅なマイナーチェンジで、ヴェルファイアは廃止されるだろう。
カスタムベースで中古を選ぶならヴェルファイアはアリ
この人気動向は、中古車価格にも影響を与える。以前はヴェルファイアの人気が高かったが、今は完全にアルファードだ。そのために中古車価格もアルファードが高めで、ユーザーが売却するときも有利になる。
現時点で新車を買うなら、特別仕様車を選ぶとしても、ヴェルファイアではなくアルファードにすべきだ。逆に中古車を選ぶときは、ヴェルファイアも検討する。人気が下降気味で、価格もアルファードに比べて割安になりやすいからだ。