イタリアはもちろん世界的にも注目が高まるイベント
日本列島が梅雨空に包まれていた6月10~12日。イタリアはピアチェンツァ近郊のカステッラルクアートからヴェルナスカに向かう約8kmの公道を閉鎖した特設コースにおいて、ヒストリックカーによるヒルクライム「ヴェルナスカ・シルバーフラッグ」が開催されました。雑誌でしか見たことのない、博物館でしか見たことのないヒストリックカーがワインディングを駆け登っていく……。そんな夢のようなイベントをレポートします。
1995年にスタートし今年で26回目の開催
ヨーロッパでは昔からヒルクライムイベントが盛んで、1930年にはヨーロッパ選手権が始まっていました。今回のイベント、ヴェルナスカ・シルバーフラッグと同様に、古城のある集落カステッラルクアート(Castell’Arquato)と、小高い山頂にある集落ヴェルナスカ(Vernasca)を結ぶワインディングロードを舞台に、1953年からピアチェンツァ自動車クラブ(CPAE=Club Piacentino Automotoveicoli d’Epoca)が主催するヒルクライムイベントが開催されていたのです。
メーカー系のチームも参加して熱戦が繰り広げられたようですが、1972年を限りにイベントは休止されてしまいました。そのイベントを復活させるさせる格好で1995年に始められたヒストリックカーイベントがヴェルナスカ・シルバーフラッグです。
ちなみにシルバーフラッグのネーミングは、1972年まで続けられていたヒルクライムイベントで使いこまれたチェッカーフラッグが、色あせて銀色に映っていたことから命名されたとのこと。この辺りにも競技だったヒルクライムへの想いが伝わってきます。
またカステッラルクアートやヴェルナスカ、そしてピアチェンツァが属するピアチェンツァ県や、そのピアチェンツァ県が属するエミリア・ロマーニャ州が後援するイベントともなっていて、パルクフェルメの警備に加えて州警察(Polizia di Stato)が1962年式のフェラーリ250GT/E 2+2を走らせる“洒落っ気”も感じられました。
コースはパルクフェルメのあるカステッラルクアートの街なかをスタートし、直線的なルートを4kmほど走り、ルガニャーノ・ヴァル・ダルダ(Lugagnano Val D’arda)のカサナ広場で左に折れ、1kmほど走った先からいよいよ登りのワインディングが始まります。
短いストレートとタイトなコーナーが続くコースには、ヘアピンが連続するポイントもあって、例えて言うなら御殿場から箱根へ抜ける乙女峠の登り、のようなワインディングが3km近く続きます。Strada Provinciale 4と言うから日本でいうところの県道になるのでしょうか、センターラインが引いてあって対向2車線ですが、走行セッションのタイミングではクローズドされているので、アウト・イン・アウトのラインを目一杯使って元気に走る参加車も少なくありません。
もっとも純然たるスピード競技ではなく、クラシックカーイベントのパレードランに近いのでヘルメットの装着義務もないようです。助手席からだけでなく、ドライバーも沿道の観客に手を振る有様ですから、タイムアタックを見たい、との想いには少し裏切られるかもしれません。それでもヒストリック・レーシングカーが走る姿を目にすることができるのは、ファンにとっては堪らないもの。仕事を忘れて走り去るクルマに見惚れていたことも何度かありました。