決勝はマイナートラブルが発生するも安定してラップを刻む
いよいよ午後12時、TOYOTA GAZOO Racingにとって3年ぶりのニュルでのレースがスタートした。綿密に組み立てられたレースプランに則り、着実に周回を重ねる2台。とくに片岡はダブルエントリーとあり、両車をドライブしながらその車両状況に気を配るという多忙な1日だったが、「久々にニュルをドライブし、このおっかなさと楽しさがたまらない」と、日本のレースにはないコンディションをエンジョイしていた。
LCはピットストップを終えて走り出そうとした際、突如エンジンがストップするという突発的なトラブルも見受けられたものの、一旦ピットへ車両を入れ、点検をしたあとにまたすぐにコース復帰を果たし、ほっと胸をなでおろした。足まわりやエアロパーツを強化し、量販車へその技術を活かすための参戦というだけに、ニュルで表れたどんな小さなトラブルさえも、よりよいクルマ作りへの糧となるのだ。
4時間耐久レースだが、もはや一瞬たりともペースダウンが許されないスプリントレースと化したNLS。#244のGR86は初戦を総合74位、SP4クラスでは1位を獲得。また、#345のレクサスLCは総合49位、SP-Proクラスの1位という結果に、両車とTOYOTA GAZOO Racingにとって幸先のよいニュル復活となったことは間違いないだろう。
新型GR86は現地のチームやファンからも大注目
日本ではひと足早くスーパー耐久シリーズでデビューしているGR86だが、S耐用は1.4Lのターボエンジンが搭載されている。このニュルに初登場した#244のGR86は、パワフルな2.4Lの量販車エンジンをそのまま採用していることも注目すべき点のひとつである。
そして『峠』と言っても過言ではないニュルでFRがどのように立ち回り、そして通用するのか、一般量販車ユーザーにも非常に興味深いのではないだろうか。現在ニュルでも活躍している旧型とはデザインも一新され、現地のレース関係者からもかなりの高評価を得ている。
また、レース初心者やアマチュアドライバーからトッププロまで幅広い層が活躍するNLSでは、レーシングカーの安全性や操作性、そしてデザイン性にもかなり手厳から。それだけに、彼らに新型のGR86を購入してニュルを走ってみたい、レースに出てみたいと思わせるクルマ作りには、TOYOTA GAZOO Racingの並々ならぬ情熱や厳しい視点が十分に込められているに違いない。
ドイツでは量販車のGR86のデリバリーはまだ始まっていない事もあり、ファンのたくさんの期待がこのTOYOTA GAZOO RacingのNLS初参戦には寄せられていたことは容易に想像ができる。
両車ともに次に9月開催されるNLSの第6戦の12時間レース(6時間耐久レースⅹ2戦)に参戦する予定で、まだ正式なエントリーリストは出ていないが、TOYOTA GAZOO Racingのプレスリリースを見る限り、レクサスLCには石浦宏明と松井孝允に加え、大嶋和也と蒲生尚弥、そしてGR86には片岡龍也、佐々木雅弘に加え山下健太と豊田章男社長の長男でウーブン・プラネット・ホールディングスのシニア・バイス・プレジデントを務め、スーパー耐久シリーズでは#28のORC ROOKIE GR86 CNF Conceptをドライブする豊田大輔も名を連ねる豪華なラインアップが期待できそうだ。
※文中敬称略