クルマ好き以外でも知っている車種を紹介
自動車趣味人がクルマ好きになったきっかけは人それぞれだといえる。なかには漫画やアニメの影響が少なからずあったはず、という見解に異論を挟む者は少ないだろう。
例えばDr.スランプ/Dr.スランプ アラレちゃんには、アウトビアンキ A112 アバルトやスバル 360。ドラゴンボールのフィアット ヌォーヴァ500、ルパン三世 カリオストロの城にもフィアット ヌォーヴァ500やシトロエン 2CV。さらには、エヴァンゲリオンのアルピーヌ A310やマツダ・コスモスポーツ、シティーハンターのクラシックミニ、名探偵コナンのマツダ キャロル 360やジャガー Eタイプ、そして、逮捕しちゃうぞのトヨタ・スポーツ 800あたりがその代表例だ。その一部を紹介していこう。
Dr.スランプ アラレちゃん/アウトビアンキ A112 アバルト&スバル 360
鳥山 明氏による漫画/アニメ作品であるDr.スランプ/Dr.スランプ アラレちゃんにおいて、ペンギン村警察署で使われていたアウトビアンキ A112 アバルトのパトカーはキーン! と走ってきたアラレちゃんにぶっ飛ばされ、スバル 360のパトカーはガッちゃんにかじられていた。
実車の説明をすると、アウトビアンキ A112は最初期モデルが1969年にデビューした前輪駆動車で、高性能バージョンのA112 アバルトが登場したのは1971年のことだった。スバル 360は、そのスタイルから「てんとう虫」の名で親しまれている軽自動車で、富士重工業が1958年から1970年まで生産。日本で最初の大衆車(国民車)だといえ、モータリゼーションの進展に大きく貢献した。
ドラゴンボール/フィアット ヌォーヴァ500
同じく鳥山 明氏の漫画/アニメ作品であるドラゴンボールでは、主人公の孫 悟空が亀仙人のかめはめ波を見て、自分もできるかも? と思い、同じポーズをしたら出た一番最初の小さなかめはめ波によって破壊されたのがフィアット ヌォーヴァ500であった。
ルパン三世 カリオストロの城においてもフィアット ヌォーヴァ500が大活躍した。ここで実車の詳細を記しておこう。現行型フィアット 500のモチーフとなっていることで知られるヌォーヴァ 500は、イタリアのベーシックトランスポーターの傑出として名高い初代フィアット 500(トポリーノ)の後継モデルとして1957年に登場した。
水冷4気筒633ccエンジンを車体の後部に搭載したフィアット 600(セイチェント)が1955年に登場していた。だが、より小さく、より安価なモデルの需要があると考えたフィアットは、600をひとまわり小型化したミニマム・トランスポーターの開発に着手。ダンテ・ジアコーサが率いる設計陣の頑張りによって見事完成したのが、空冷2気筒エンジンをリヤに搭載し、後輪を駆動するヌォーヴァ 500であった。
ルパン三世 カリオストロの城/シトロエン2CV
ルパン三世 カリオストロの城ではシトロエン 2CVも活躍したので、こちらのヒストリーも記しておく。いまでも数多くの自動車趣味人を魅了しているシトロエン 2CVは、1948年のパリ・サロンで発表され、1990年まで生産された。そう、稀代のロングセラーモデルなのだ。
2CVの構想が練られたのは、なんと1935年のことである。当時のシトロエン副社長だったピエール・ブーランジェが、自国の農民たちが荷物の運搬に馬車や手押し車を活用しているのを見て、彼らの移動手段となるシンプルで実用的な小型大衆車の必要性を痛切に思ったことが開発のきっかけになったのだという。 開発にあたってブーランジェがシトロエンの技術者たちに示したテーマは、こうもり傘に4つの車輪を付けるというものだった。さらに50kgのジャガイモもしくは樽を載せて走れること、60km/hで走行できること、ガソリン3リッターで100km以上走れること。荒れた農道を走破可能で、カゴいっぱいの生卵を入れて農道を走っても割れないこと、価格がシトロエン・トラクシオンアヴァンの3分の1以下であること、自動車に不慣れなドライバーも簡単に運転できること、という厳しい条件をクリアすることも求めたといわれている。