メンテやパーツ供給もしばらく困らない
今買うべき国産スポーツモデルとは?
多くの中古車販売店、専門店に話を聞くと新旧問わずスポーツカーのMT車やハイパフォーマンスなモデルの中古車相場は、今後も上がり続けると口を揃える(上昇率は車種によって異なる)。つまり、ほとんどの車種はいまが底値であり、欲しいクルマがあって支払いに問題がないのであれば、すぐに行動に移した方がいい。最近は新型車も新型コロナウイルス感染症やウクライナ情勢の影響で生産がままならず、納期は伸びる一方だ。いまオーダーしても納車がかなり先という話は、自動車系ネット媒体や自動車専門誌でも語られているのでご存じのことだろう。
その影響は中古車にも現れており、新車の生産(納期)遅れによって中古車需要が高まり、結果として中古車相場は上昇している。とくに絶版スポーツカーについては、新車価格以上のプレミア価格を掲げているクルマも目立つ。なかでもバブル期に開発されたネオクラ世代の人気が際立っているが、それでも20年以上も前の古いクルマ。各部の劣化は当然進んでおり、所有することで満足度が満たされるのなら良いが、普段使いするのなら車両本体価格にプラスして、購入後のメンテナンス費用も頭に入れておかなくてはならない。
また、部品の製造廃止も進んだモデルもあるので、憧れて買ったはいいが維持するのに相当の費用と手間がかかり、不本意ながら手放してしまったという話も聞く。ネオクラ旧車であっても維持していくにはクルマと向き合う覚悟と愛する熱量が必要なのだ。
今回はその点も踏まえ、この先10年普通に乗り続けることができ、しかもプレミア価格になっておらず、将来価格高騰も予想されるモデルを5台ピックアップした。
トヨタの匠が精魂込めて作る珠玉モデル
[GRヤリス/GXPA16型]
レギュレーションにミートさせた新設計の1.6L直3ターボに最新の4WDシステム(GR-FOUR)を搭載。車名はヤリスを名乗りながら標準モデルとは異なるカーボンパーツ&アルミパーツが多用された専用ボディなどによって、WRCで勝つために技術の粋が投入されたパフォーマンスモデルであるGRヤリスは、今後値上がり必須な1台だ。
もちろんトップクラスのプレミアモデルとなるのは2022年1月に受注を開始したGRMNヤリス(受付終了)だが、スタンダードのGRヤリスもトヨタの匠たちが集う多品種少量生産ラインである「GRファクトリー」で部品選別、高精度組み立てされるのは同じ。トヨタにとって特別なモデルであることは間違いない。
いま手にしておくべきとプッシュする理由は、GRヤリスが製造中止になる可能性が否めないからだ。元々、WRCに参戦するベースモデルとして作られたクルマだが、レギュレーションの変更で従来必要だった連続した12カ月で2500台以上、車種全体で2万5000台以上の生産台数が求められた規定が撤廃され、ベース車両がプロトタイプでもOKとなった。つまり存在意義が薄れた(規定に合致させたことで、下位カテゴリーへの参戦には役立ったが)ワケだ。つまり、GRヤリスはいつ生産終了しますと言われてもおかしくない状況にあるのだ。
同じコンポーネンツを使用したGRカローラ(こちらも狙い目)が今秋から製造されることもあり、バックオーダーも抱えているので、すぐに終了のアナウンスがあるとは思えないが、その神の声があった瞬間に値上がることは必至。中古車相場は現在、新車の製造が遅れている(GRMNヤリスの生産のため標準車の納期が遅れる可能性は大)ため、やや平均相場が上がり、新車よりも少し高い価格で推移している状況なので、買うのならば新車でオーダーするのがベスト。リセールを考えたら最上級のRZパフォーマンスパッケージがいいだろう。
英国生産の異端児タイプRが200万円以下!
[ホンダ・シビックタイプRユーロ/FN2型]
高騰著しい歴代シビックタイプRのなかで比較的維持がラクで手に入れやすいのが、FN2型こと4代目シビックタイプRユーロだ。2代目のEP3型同様に欧州(英国)仕様のシビック3ドアをベースとした輸入車で、2009年に2010台、2010年に1500台限定で販売されたモデルだ。当時はFD2型こと3代目シビックタイプRも販売されていたが、サーキットベストなFD2型に対して、FN2型は速さよりも欧州仕込みの操る楽しさを重視したドライビングベストなクルマと性格が分けられていた。
エンジンも同じK20A型2L直4DOHC VTECだが、FD2型の最高出力225ps/最大トルク21.9kg-mに対して、FN2型は最高出力201ps/最大トルク19.7kg-mとスペックをあえて落とすことで、VTECならではの官能性はそのままにフレキシブルな実用性も両立させた。さらに2次バランサーを装着し、振動とノイズを低減させるなど、上質さを兼ね備えたのもこれまでの硬派なタイプRとは異なっていた。
独創的なワンモーションフォルムは好みが分かれるところだが、今見ても古臭さを感じさせることないデザインであることは間違いない。そして、現時点ではという注釈は付くが、初代から受け継がれてきた最後の3ドアハッチバック&自然吸気エンジン搭載車。往年のファンにはFD2型よりもシビックらしいシビックであるとも言える。
ただ、タイプRといえば超硬派なスポーツモデルをイメージするファンは多く、ジェントルな大人仕様のFN2型は軟弱とされるようで、FD2型に比べて中古車相場は低め(FD2型は髙いものだと500万円)。現在時点(2022年6月末現在)では、高いものでほぼ新車価格(2009年仕様が298万円、2010年仕様が300万円)同等のモデルもあるが、ほとんどの個体は200万円も出せば、まずまずなコンディションのモノが手に入る。
それでも1年前に比べると上昇しているので、比較的リーズナブルにタイプRの本流といえるNAを味わいたいのなら、早めに決断する方がいい(デザインが好みならだが)。また、正式な生産終了は2012年なので、純正部品の製造廃止が早いといわれるホンダであっても、部品供給はしばらく問題ないという点でも安心である。