エンブレムはライオンだけど「猫足」「猫目」
猫足ならぬ猫目。これはキャッチーな書き出しが浮かんだぞ……と内心小躍りしながらプジョー206デビュー当時の日本の広報資料を久しぶりに紐解くも、「通称“猫目”と呼ばれるフロントヘッドライト」と、すでにシッカリと表記があった。おそらく当時参加したはずのプレスブリーフィングかどこかでその説明を耳にしていたはずで、単に筆者が失念していただけ、だったようだ。
フレンチBセグ・ハッチバックの名作
プジョー206は、もともと1998年のジュネーブショーで、「20♡(ツーオーハート)」として登場がほのめかされた後に正式デビュー。日本市場へは1999年5月から導入が開始された。直接の前身は、やはり日本でのプジョー人気を高める役割を果たし、「205ターボ16」なるミッドシップの「205」とは似て非なるスーパーマシンが、WRCの2年連続メイクスチャンピオンとパリダカ4連覇を遂げるなどして一躍脚光を浴びた。また「末尾6」の世代では「106」、「306」、それとミドルクラスの「406」(セダン、ブレーク、クーペ)が先行して登場しており、このラインアップの「2」のモデルとして収まるべく登場したのが206だった。
ただし末尾6ではあっても、実質的にはほかの末尾6のモデルに対して最後発ということもあり、ひとつ世代の新しいクルマとして登場した。もともと当時の306はそれまでの205よりも上のクラスに登場し、よりコンパクトなAセグメントの106との間にやや開きができ、クラスという点でやや曖昧だった205に対して、206はハッキリとBセグメントの新型車と名乗りをあげた。プジョーの資料にも「ルノー・クリオ(ルーテシア)、VWポロ、オペル・コルサ(ヴィータ)などが競合」だと明記されていた。
コケティッシュなスタイルで人々を魅了
ところで206の奮ったスタイリングはスティール・プジョー、すなわちプジョー社内でデジタルモデリングによりデザインされたものだった。さすが! と思わせられたのは、前後バンパーの黒の樹脂部分は必要に応じて脱着・交換が可能だった点。フランス車らしい合理的精神に根付いていた。そしてBセグメントのいわゆる実用車ながら、シュッ! とコケティッシュなスタイリングはじつに個性的。そのシュッとしたノーズに埋め込まれていたのが、ポリカーボネイト製の例の「猫目」だった。
ちなみに本国仕様の写真で構成されていると思われるカタログには、「それは、猫科の躍動。」といったコピーも。諸元表で確認できるが、当初から1.4L、1.6Lモデルに加え、2L DOHC搭載の高性能モデル「S16」も早々に設定されていた。ただしこのS16は外観上は15インチタイヤのほかは「猫目」の内部が4灯式になり、ドアハンドルがボディ色化されるなど、差別化の仕方は控えめなものだった。