デビューが少しだけ早かった……
ドアはスライドドアではなかったが、大きめのドアで乗降性もよく、上下2分割リヤゲートは大きな荷物も積みやすい設計。エンジンもホンダらしく、カムのタイミングベルトに国産車で初めてコッグドベルトを採用していた。バランスシャフトまで備えていたので、振動が少なくスムースで静粛性にも優れていた(最高出力30ps/8000rpm、最大トルク2.9kgm/6000rpm)。
しかし時代を先取りしすぎたのか、販売は意外に振るわず、総生産台数は1万8297台、製造期間2年3ヶ月という短命に終わってしまった……。とはいえ21年の時を経て、ワゴンRがステップバンの文法を取り入れ、大ヒットすると、ホンダも1996年にFFの元祖ミニバン、ステップワゴンを投入!
他車のミニバンがFRのキャブオーバータイプだったのに対し、ステップワゴンは、ステップバンのDNAを受け継ぐFFの1.5ボックスのスペースユーティリティと低価格を武器に、月間販売台数1万台以上の大ヒットを記録。見事ステップバンの敵を討つことに成功している。
またホンダのNシリーズ初の商用車として、2018年7月にデビューしたホンダN-VANも、ステップバンの衣鉢を継いだ一台と位置づけてもいい。最近ではホンダN-VANのカスタムとして、ステップバンのフェイスに変更するキットも販売されているほど。
そう考えると、ステップバンももう少し長い目で見て、根気強く売り続ければ、コンセプトだけでなく販売面でも優れた名車として、人々の記憶に残ったのではなかろうか。