場所によっては記念品ももらえる夢のパスポート
先ごろ、ヴェルナスカ・シルバーフラッグについて何回かに分けてレポートしました。その舞台となったピアチェンツァは、イベントの後援者ともなっていたエミリア・ロマーニャ州に属しています。そのエミリア・ロマーニャ州にはフェラーリやマセラティがあるモデナ、ランボルギーニや2輪メーカーのドゥカティがあるボローニャなどが属していて、数多くの自動車博物館があることでも知られています。そんな同州ではMOTOR VALLEY PASSPORTを発行していました。今回は、そのMOTOR VALLEY PASSPORTを紹介します。
自動車博物館天国のイタリアで大きなうねりとなっているMOTOR VALLEY
今回のイタリア取材行は、ヴェルナスカ・シルバーフラッグを取材してみたい(観てみたい)、というのが最初のきっかけです。インターネットの世界を徘徊していて見つけたもので、イギリスはグッドウッドで開催されているフェスティバルofスピードのイタリア版だ、という触れ込みでした。
そしてせっかく行くのだったらトリノに新たに整備されたヘリテージHUBも訊ねてみたいし、ミラノのアルファロメオ歴史博物館には、前に訪れた際には展示されていなかったカルトなレーシングカーが収蔵されているというからそれも見てみたい。
さらにはエミリア・ロマーニャ州にはダラーラの本社があり、ジャンパオロ・ダラーラさんが手掛けたクルマたちを展示しているらしいとの情報もあり……。ということで11日間の旅程のなかに、ヴェルナスカ・シルバーフラッグのイベント取材以外に8つの博物館を巡る、いつも通りのハードスケジュールとなりました。
それにしてもイタリアは博物館天国で、モデナにはフェラーリ博物館とエンツォ・フェラーリ博物館、そして個人博物館ながらマセラティに特化したウンベルト・パニーニ自動車博物館があります。駆け足ならば1日で回り切れるため、ハードスケジュールで巡る貧乏ライターには最高のシチュエーションとなっています。
また今回は予定に入れていませんでしたがボローニャにはランボルギーニ博物館とフェルッチオ・ランボルギーニ博物館、ドゥカティ博物館もあって、こちらも駆け足なら1日で回り切れる位置関係にあります。ちなみに、今回訪れて取材することになったトリノでは、世界的に素晴らしいと評判の高い国立自動車博物館に加えて新たに整備されたヘリテージHUB、フィアット歴史博物館などがあり、効率的に巡ることができます。
博物館巡りの取材行でイタリアは、これまでに何度か訪れていたのですが、このエミリア・ロマーニャ州に、こんなにも多くの博物館があるとは認識していませんでした。それでもMOTOR VALLEYと呼ばれる博物館群があることは、さまざまなパンフレットで分かっていました。
そして今回、ミラノに到着した日に空港でレンタカーをピックアップし、初日はモデナにある3つの博物館を駆け足で回ろうと、アウトストラーダの1号線を東に向かい、まず最初に訪れたのはウンベルト・パニーニ自動車博物館でした。こちらは入館無料で、任意で寄付金を置いてくるシステムになっています。
ぜひとも見ておきたい、と思っていた2台のバードケージ、Tipo61とTipo63を撮影し、ほかもひと通り見て回ったあとにミュージアムショップを除いて資料を購入していたら、カウンターに座っていた女性スタッフが「パスポート持ってる?」と聞いてきます。バッグのなかからパスポートを出して「これか?」と聞き返すと、彼女は笑いながら「そのパスポートじゃなくて、これよ」と、パスポートサイズのブックレットを差し出します。
そして「このあともいろんな博物館を巡るなら、持っていった方がいいわよ」と手渡してくれました。それがMOTOR VALLEY PASSPORTでした。そしてそれはMOTOR VALLEY構想を支援してきたエミリア・ロマーニャ州が展開する新たな一手で、州内の博物館や自動車/2輪メーカー、サーキットなど41箇所ものポイントを巡るスタンプ帖になっており、場所によっては記念品ももらえるようです。
自動車博物館だけでなくサーキットやレーシングスクールも参加するMOTOR VALLEY
あらためてMOTOR VALLEY PASSPORTを観てみると、今回エミリア・ロマーニャ州の中で巡る予定になっている、モデナにある3つの博物館と、パルマにあるダラーラの本社に併設されたダラーラ・アカデミーの4カ所は当然のようにリストに入っていました。
モデナではマセラティとパガーニ、そしてエネルギカ・モーター・カンパニーという名の電動バイクメーカーの本社/ショールームに、リジーニ・コレクションとスタンゲリーニ博物館、そしてアウトドローモ・ディ・モンツァと6カ所ものスタンプポイントがあり、パルマでもダラーラ・アカデミーのほかにアウトドローモ・ディ・ヴァラーノとスクーデリア・デ・アダミッチ(レーシングスクール)と2カ所のスタンプポイントがありました。ちなみに、リジーニ・コレクションとスタンゲリーニ博物館は以前に訪れていますが、その当時はMOTOR VALLEY PASSPORTも存在しておらず、スタンプもありません。
それにしても、州が支援して自動車博物館やメーカーのショールーム、サーキットやレーシングスクールまでを統括するMOTOR VALLEY という構想を展開し、それらを巡る観光客に向けてMOTOR VALLEY PASSPORTを発行して観光誘致を促している状況は、もう羨ましいのひと言です。
ちなみに、フェラーリ博物館とエンツォ・フェラーリ博物館は共通入館券を設定するなど、これまでにも関連性をアピールし、観光客の便宜を図っていました。確か、日本国内でもトヨタ博物館が、やはりトヨタ関連の博物館であるトヨタ産業技術記念館との共通入館券を設定していました。
しかし今度のMOTOR VALLEY PASSPORTは、共通入場券とか割引制度はともかくとしても、その規模において遥かに大型化しています。例えて言うなら浜松辺りまでを含めた中京圏で、何か共通のパスポートをつくって運営していこうというもの。しかも博物館だけでなく、メーカーの工場見学からショールーム、さらにサーキットやレーシングスクールまで、多くの関連施設が一緒に活動していくわけですから、これは大きな力になるに違いありません。
そういえば日本自動車工業会の会長であるトヨタ自動車の豊田章男社長が提言されている、550万人の力を結集して……その手段のひとつとしても大いに意義のある行動になると思うのですが。いずれにしても、イタリアが羨ましいと痛感した取材行でした。