クラシックカーのほとんどはクーラー無し……
今年の梅雨明け時は、とにかく異常な暑さだった。連日、最高気温が40℃以上になったというニュースを見ながら、あ~、これから本格的な夏が来るんだよね……7月、8月の暑さは、どうなってしまうのかしら? と不安になってしまった。
三角窓と扇風機では過ごせないほど温暖化が進行
それと同時にクーラーが無いクラシックカーを運転している自分をイメージし、アタマがクラクラしてしまったが、筆者が1974年式アルファロメオGT1600ジュニアを買った1998年は、いまよりも明らかに日中も涼しかった。涼しかったというか、いまほど最高気温が上昇することはなく、28℃を超えたらクーラーが無いアルファロメオに乗るのを止めようと思っていたのだ。
現在では考えられないことだが、2000年問題が懸念されていたころは最高気温が30℃を超える日は稀で、筆者は足グルマを所有することなく、しばらくの間アルファロメオ1台だけで暮らしていた。その後、夏の最高気温がどんどん高くなり、足グルマとしてエアコンがある国内外のコンパクトカーやドイツ製のセダン、ステーションワゴンを導入し、今日に至っている。
年齢が50歳オーバーになったこともあり、ここ最近は真夏にアルファロメオに乗る機会が減った。だが過去に何度か、扇風機、凍らせたペットボトル飲料、各種熱中症対策グッズ、タオル、着替えなどを1974年式のイタリア車に積みつつ、炎天下に運転しながら、クーラーがあれば最高気温が40℃以上の日にも普通に乗れるかも? と夢想したことがあった。
エンジンのパワーを食われる、軍資金がナイ、といった理由で後付けクーラーキットに手を出すことなく、2022年の酷暑を迎えてしまった。だが、筆者と同じような考え方で「後付け」を敬遠し、痩せ我慢をしながらクーラーが無いクラシックカーに乗っている人も少なくないと思う。安いモノも存在しているようだが、一般的に軍資金として40~50万円ぐらいのコストが必要となるので、やはり、おいそれとは装着できないのだ。
「高い」「パワーを食う」と評判の悪かった後付けクーラー
「後付け」の世界では、ここ10年ほどアメリカ製のクラシックカー向けクーラーキットや中国製の安いクーラーキットが主流だった。それらのクーラーキットで、都市部の渋滞にハマることも考慮しつつキチンと冷やすとなると、ガラスへの紫外線カットフィルムの施工や床下および天井の断熱までしっかりやらないと効果は得にくかった。
それでいてエンジンのパワーを食われてしまっていたのだから、その後メジャーな存在となった軽自動車用コンプレッサーを活用したクーラーキットが登場したときには、世のクラシックカーオーナーが諸手を挙げて喜んだものだった。それでも、より効率がよくなったものの、エンジンからコンプレッサーの動力を得るための改造が依然として必要だったので、装着するのが大変だった。
クラシックVWでは信頼性の高いクーラーキットが定着
ちなみにクラシック・フォルクスワーゲンの世界では、古くはヤナセでもオプションでクーラーを用意しており、今日もスペシャルショップの「FLAT4」でエアーコンディショナーキットを販売。空冷VWにデイリーカーとして乗るユーザーが結構な率で装着している。タイプ1(ビートル)なら5分もしないうちに車内がヒンヤリし、室内空間が広いタイプ2(バス)も10分ぐらいで車内全体の空気を冷却するだけの十分な能力を持っているそうだ。
リヤのエンジンルームにコンプレッサーを取り付け、吹き出し口(エバポレーター)を助手席側に設置する仕組みで、空冷エンジン時代のVWならびにポルシェ356や912にも使える。ちなみに「FLAT4エアーコンディショナーKIT」は36万800円(税込)で、取り付け工賃は車種や仕様によって異なるとのこと。ほかにエバポレーターの形状が異なるVWオリジナルスタイルもラインアップしている。
エンジンパワーを食わない電動コンプレッサーがいま注目!
そして、技術の進歩とはスゴイもので、最近になってエンジンのパワーを食わない電動コンプレッサーが出てきた。そこで早速、発電を強化したり、サブバッテリーを積んだりして、後付け電動クーラーキットを装着することがクラシックカー界全般で流行ってきている。電動コンプレッサーの取り付け場所はエンジンルーム以外でも可能なので、フロント部が重くなる、ボンネット内の故障箇所が増えるというデメリットからも解放されるのであった。
後付け電動クーラーキットは、電動コンプレッサー、コンデンサー、エバポレーターなどを納めるスペースがあれば取り付ける車種を選ばないところが魅力で、旧知のクルマ仲間である水町さんから愛機のホンダZ600に装着した(!)との連絡があった。下記が彼からの最新レポートだ。
ホンダZ600に電動クーラーキットを装着してみた
「75~80Aがメインバッテリー以外に必要になるため、それなりの発電量があるオルタネーターに交換する必要があります。自分の場合、小排気量の旧車であり、高発電量のオルタネーターへの変更は困難であったことから、バッテリーの容量のみで駆動するクーラーと割り切って使用することを前提にして取り付けを行いました。私が電動クーラー用に搭載しているバッテリーは90D26Lです。先日、断続的とはいえエアコンとして3時間(14:30~15:30/16:00~18:00)、そして、さらに送風機として40分ほどは問題なく使用できることが確認できました」
「肝心のクーラーとしての冷却能力については、16:00~18:00の使用時がすでに外気温がだいぶ下がった状態だったので、真夏の暑さでの効果を保証できるものではありませんが、少なくとも3時間テストにおける使用条件下では、冷風が出ることを確認できました。まあ、課題はあるものの、やはり、クーラーが装着されていないクルマに比べれば十分意味はあるものと自己満足しています」
「また、26Lサイズのバッテリーであれば、調べたところ性能ランクは125のモノも存在するようなので、さらなる時間延長の可能性もあると感じました。帰宅後にバッテリー上がりを防ぐためにトリクル充電しているのですが、2時間の使用時には3日ほどで充電できましたが、今回は4日かかりました」
車中泊時などに活用できるポータブルクーラーの性能が年々上がってきているので、夏場だけそれを使えないか? と模索しているクラシックカーユーザーもいるようだ。後付け電動クーラーキットはネット通販で6万円~10万円程度と安価であることと、クルマ用である点がアドバンテージであり、これからの主流になるかもしれない。取り付けはプロにオーダーするかDIYで自己責任にて行うしかないが、知識と技術のある人はトライする価値があるだろう。熱中症に気をつけながら、涼しく快適なサマードライビングを愉しんでほしい。