どのモデルも魅力に溢れていたレガシィツーリングワゴンの進化ぶり
初代が1989年に登場してから2021年に登場した新型アウトバックまで、早くも7代目となったレガシィ。つねに進化をし続け、スバルのフラッグシップモデルに君臨してきたモデルだが、一世を風靡したツーリングワゴンは5代目までで絶版となり、現在はレヴォーグにその役割をバトンタッチしている。そこで、あらためて歴代レガシィツーリングワゴンはどんなモデルであったのか? そしてどのモデルがベストだったのかをスバリスト目線で歴代モデルを振り返ってみたい。
レオーネからバトンを託され初代レガシィがデビュー
[BF型・1989年1月発売]
1989年1月にデビューした初代レガシィ(BC・BF型)は、それまでの基幹モデルだったレオーネから、イメージを一新する。ラインアップをAWD中心とし、スポーツモデルとしてツーリングワゴンにもDOHCインタークーラーターボを搭載したGTを設定。’90年代のRV(レクリエーショナルビークル)ブームが追い風になり、スポーツカー顔負けの走れるステーションワゴンとして注目された。
また、レオーネまでは貨物仕様のバンモデルもあったが、レガシィではバンを廃止することで、ワゴン=商用車というイメージを払拭することに成功した。スバル(当時の社名は富士重工業)のイメージアップにも貢献した立役者だ。
後期型GT-Bでスバル初の280馬力を達成!
[BG型・1993年10月発売]
1993年に登場した2代目(BD・BG型)は、5ナンバーサイズとしたキープコンセプトながら、初代の直線基調に丸みを持たせたことで、スポーティさのなかに優雅さを兼ね備えた秀逸なデザインが人気となる。とくに後期型では当時の自主規制である280psをインプレッサWRXよりも先に達成させた。
2L DOHCツインターボエンジンは、プライマリータービンからセカンダリータービンへと切り替わる際のトルクの段付きなどが指摘された。しかし、AWDの走破性と扱いやすいサイズ感に加え、後期型から設定された280ps仕様(ATは260ps)のエンジンを搭載したGT-Bには、ビルシュタインダンパーや当時としては大径サイズとなる17インチホイールなどを標準装備。スポーツワゴンの王者として爆発的なヒット作となった。
ちなみにこのころは、まだワゴン=バンというイメージが残っており、各メーカーとも商用車をイメージさせる白系のボディカラーの設定がワゴンには少なかったが、2代目レガシィツーリングワゴンではイメージカラーとして「ピュアホワイト」を設定。このころは街中で白いGT-Bを目にしない日はないというほど、よく見かけたものだ。
リヤサスの形状変更でラゲッジ容量を拡大
[BH型・1998年6月発売]
1998年には3代目(BE・BH型)レガシィが登場。車重こそ重くなったものの5ナンバーサイズのままデビューした。結果的に3ナンバー化全盛期にむしろ歓迎され、2代目からの買い替えだけではなく、新たなレガシィツーリングワゴンオーナーも取り入れた。
パワートレーンこそ、2代目から大きく変更はないものの、指摘されていたトルクの段付きを解消するためのタービン変更をはじめ、燃費向上のための改良も随所に行われた。同じEJ20というエンジン形式ながら、別物と言っても過言ではない改良により、EJ20の愛称は2代目後期型に搭載のMASTER-4から、この3代目モデルからはPHASEIIへと進化した。
全体的には初代に通じる直線基調へ回帰したイメージだが、2段式のHIDロービームヘッドランプ(一部グレードは2灯式ハロゲン)や、後方の視界を向上させるためのV字型のリヤウインドウなど、3代目ならではの意欲的な意匠も数多く採用。足まわりは前後ストラット式からフロントにストラット、リヤにマルチリンク式へと変更することで、ラゲッジスペースの拡大と後席のリクライニング機構を実現させた。
4代目でスバル初のカーオブザイヤーを獲得
[BP型・2003年5月発売]
続く4代目(BL・BP型)は、2003年5月に登場。スバルとして初めて日本カーオブザイヤーに輝くほど評価が高く、3ナンバーサイズながらも大きすぎないディメンションと、3代目に対してステアリング切れ角の拡大による扱いやすさ、徹底した軽量化による運動性能の向上により、登場から約20年を迎える今でも根強い人気を誇る。パワーユニットは変わらずEJ20としながらも、タービンはこれまでのシーケンシャル(ツイン)仕様からシングル仕様に変更。さらにNAモデルの出力向上や6気筒モデルにMTを設定するなど、ラインアップも幅広く展開していたのが特徴だ。
肥大化が賛否を呼んだが実用性は大幅に向上
[BR型・2009年5月発売]
そしてレガシィツーリングワゴンの最終章となった5代目(BM・BR型)は、2009年5月に登場した。米国市場も視野に入れたグローバルモデルとして、ボディサイズと排気量を拡大。これまで2Lモデルを主力としてきたレガシィは、2.5Lを中心としたラインアップとなる。
後期型ではターボの主力モデルが2Lへと回帰するも、NAは引き続き2.5Lのみであった。組み合わされるトランスミッションは、登場時こそターボモデルに6速MTや5速ATの設定があったものの、後期型ではほぼすべてのモデルがチェーン式CVTの「リニアトロニック」となっている。
もちろん今やスバルの代名詞であり、完全停止まで行う運転支援システム「アイサイト」(Ver.2)を搭載。従来のレガシィファンからは肥大化したボディサイズが賛否を呼んだ。だが、ファミリーユースとしては広くて荷物も載り、アイサイトまで付いて安全で快適という5代目は、それまでスバルに乗ったことのない新たな層も獲得した。
スバリストが選ぶベストバイモデルとは……?
ここまで歴代モデルを振り返ったが、ベストバイモデルはどれかと言われると、スバリストとしてはどのモデルも魅力的ではあるものの、現実的には2代目までのモデルはほぼ中古市場でも目にすることは少なく、3代目以降のモデルから選択することとなる。なかでもギリギリ5ナンバーサイズの3代目は都市部でも扱いやすく、かつラゲッジの作り込みも秀逸で、2分割のサブトランク、ラゲッジネットなどの装備も充実。中古車価格もWRX系の同年式車両と比較すると、圧倒的にリーズナブルであるのもポイントだ。
4代目は前期型こそ手ごろな相場だが、程度の良い後期型は意外と中古車価格は高め。逆にコストパフォーマンスで言えば5代目の方がリーズナブルなぐらいだ。レガシィツーリングワゴンというクルマは、世代が進むにつれ、ターゲットとする購入年齢層も高まっているため、どの世代の人が購入するかでオススメモデルは大きく異なるので、じつに悩ましい選択といえる。