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バブル期に誕生したホンダ2代目「レジェンド」は凄かった! V6縦置き「FFミッドシップ」高級セダンの先進性とは

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TEXT: 佐藤幹郎  PHOTO: 本田技研工業

高剛性ボディに軽量コンパクトな3.2L V6を縦置きで搭載

 その3.2L V6エンジン(C32A型)は、低回転域のトルク感を重視。先代同様の90度バンクのV6ながら新開発の1カム4バルブとして、軽量化に努めながら新開発の吸気システムを採用。ロッカーアーム内蔵の小型油圧タペットの実現により吸排気効率を向上させ、圧倒的な加速性能と低燃費を両立した。さらに等長排気のディストリビューターレス+直接点火システムを採用。PGM-FIもあって、最高出力215ps/5500rpm、最大トルク30.5kg-m/4500rpmを誇った。C32A型3.2L V6SOHCエンジン

 当時の日本車は、少しアクセルを踏んだだけ多くの燃料を噴射させて出足の加速感をアピールするなか、アクセルを少しだけ踏んだ状態では反応をあえて抑えた、欧州車が得意としてきたドライバーの操作に対して性能がリニアに応えてくれるスロットル設計としていた。このようにホンダは事故につながらないようにする安全性にも配慮しており、現在のような最新の電子デバイスがない時代に、適切なセッティングでドライバーや乗員が安全であること守り通すことが基本だと、操縦安定性も含めて追求していたことがわかる。

 加えてフロントにダンパーtoダンパー・ストラットバーを、リヤにはダンパーtoダンパー・クロスメンバーを採用。ステアリングビームを助手席側まで伸ばしたうえにピラーtoピラー・ステアリングパイプを通して、操縦性と安全性にこだわったのもホンダらしい哲学の賜であった。それはトランクも同様で、ヒンジスティフナーやアームの断面の大型化を図って高剛性を実現。遮音材も含めてホンダが作る高級車のスタイルをこだわり抜いた。

ロングホイールベースのFFモデルながら5.3mの最小回転半径を実現

 こうした優れたボディとエンジン性能を発揮させるためのFFミッドシップは、前後重量配分が60:40になることから、当然ハンドリング性能も向上。トランスミッションはインスパイア&ビガーで実績のある、二軸並行の水冷オイルクーラー付きデフ別体式の縦型をベースに、新設計の電子制御4速ATを採用した。当時のホンダ自慢の7ポジション式ATはロックアップ領域の広さもあって、4速から2速へのキックダウンや2速から3速4速へのシフトアップのショックを低減。快適=高級ではなく、走りにもこだわるホンダの哲学がそこかしこに散りばめられていた。C32A型エンジンと電子制御4速AT

 それは2910mmというロングホイールベースのFFながら、最小回転半径5.3mを実現する。アルミ合金製のサブフレームはボルト締めとラバーマウントの新構造とし、柔らかめのスプリングに対して大容量のバンプストップラバー、ピストン径が拡大されたショックアブソーバとその取り付け部位を大型化。大型のFF車としては珍しい大き目のキャスター角の設定やトー変化を可能な限りゼロにする構成とセッティングは、“ホンダがFFでも高級車は作れるのだ!”と感じさせる執念だったのではないか?

ニッチな装備として夏冬切り替え機構付きワイパーを採用

 ドライバーズカーでありながらインテリアも全面ソフトがテーマ。インパネおよびドアライニングのアッパー部分とロアカバー、グローブボックスとコンソールを同一素材として同一製法で成形。色調やシボ(模様)の統一化を図って連続感のあるデザインとしたほか、三次元本木目パネルを用いた天然木パネルを採用した。本革シートに加えて100%ウールモケットのシートは肉厚で大柄になったことで、乗り心地にも貢献する。グレードによって異なるものの、シート調整は12に及ぶ仕様や前後シートヒーター仕様も設定するなどプレミアムにももちろんこだわり抜いた。2代目レジェンドのインテリア

 面白い装備としては、夏冬切り替え機構ワイパーというニッチな機能があり、ワイパーの駆動系を一体アルミ合金のフレームにマウントしたワイパーは、通常はマウントされた低い位置からスタート。しかし積雪で雪が積もった時に一番下にまで下がることでワイパーがロックされないよう、通常よりも高い位置から拭き始めるようにしてワイパーシステムの破損を防止する工夫がなされていた。その狙いは、FRの高級車は豪雪地帯では駆動特性上安全に運転することは難しく、レジェンドのような高級FF車のほうがラクだろうという考えから生まれたと考えられる。世界的に見ても4WDを採用する高級車は数多くあるが、ホンダが得意とするFFのメリットを最大限に活かしたというワケだ。

レジェンドの革新性は継承されるも絶版に……

 どこか日本の都会的なスマートらしさが感じられて2代目レジェンドは、デビュー翌年の1991年には2ドアクーペも登場。ホンダらしいライバルとは違うホンダの高級車としてさらに人気を集めることになる。それだけにレジェンドは新しい風を吹かせた高級車として定着すると思われていた。2代目ホンダ・レジェンドクーペ

 ところが、意外にも二代目にオプション設定であったメッキモールが売れたことに影響されたのか? 3代目レジェンドは良くも悪くも“わかりやすい”コンサバな高級車になってしまいその魅力を失う。その後、280ps自主規制を打ち破った4代目や、世界初の自動運転レベル3という大きなトピックを発信した5代目が登場するも、2022年1月に販売終了となっている。

 初代レジェンドは英国メーカーとのしがらみがあり、手探りのなか誕生。2代目でいち早くホンダらしさで地位を確保したにも関わらず、その後は前述の通りレジェンドの名は迷走していった。洗練されていた新しい風を吹き込んだ日本の高級車である2代目のレジェンドだが、その志があれば現在のホンダの立ち位置も違うものであったのではないか? とホンダファンのひとりとしてはそんな想像をかき立ててしまう。

 

■ホンダ・レジェンド α(KA7型)主要諸元
○全長×全幅×全高:4940mm×1810mm×1405mm
○ホイールベース:2910mm
○トレッド 前/後:1550mm/1540mm
○車両重量:1590kg(サンルーフ付き1610kg)
○最低地上高:155mm
○乗車定員:5名
○最小回転半径:5.3m
○室内長×室内幅×室内高:1920mm×1475mm×1130mm(サンルーフ付き高は1080mm)
○エンジン: C32A型V型6気筒SOHC 24バルブ
○総排気量:3206cc
○最高出力:215ps/5500rpm
○最大トルク:30.5kg-m/4500rpm
○タイヤサイズ 前後:205/65R15
○ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
○サスペンション 前後:ダブルウィッシュボーン式

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  • 2代目ホンダ・レジェンドクーペ
  • FFミッドシップ
  • C32A型3.2l V6 SOHCエンジン
  • C32A型3.2L V6SOHCエンジン
  • 2代目レジェンドのフロントスタイル
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