軽自動車とは思えない強烈な加速力を味わえる
さて、そんなeKクロスEVを走らせれば、まずは軽自動車規格ながら、電気自動車そのものの、モーターパワーによる静かさと伸びやかな加速力が味わえる(エアコンONで停車しているときの車外騒音はある)。しかも、乗り心地もまた素晴らしく、マイルドかつ高級感たっぷり。段差やゼブラゾーンを走破しても路面からのショック、振動は最小限だ。
いつもの道が再舗装されたかのように感じられ、今、軽自動車に乗っていることなど、忘れさせてくれるほどの上質かつフラットな乗り味を示してくれるのだ。100%モーター駆動だから、アクセル操作に対するモーターのレスポンスも過敏過ぎないレベルでリニア。意のままの加減速が可能となる。だから走りやすいのだ。なお、2WDのみの駆動方式だが、バッテリー積載要件のため、リヤサスはトーションビームからeKクロスの4WD同様の3リンクに変更している。
速度を上げていっても、パワートレーンからのノイズは皆無に近く、わずかな風きり音、そしてタイヤが発するロードノイズが目立つだけ。ステアリング右下、インパネ下部にあり、操作性は決して褒められないドライブモード(スイッチ)はエコ/ノーマル/スポーツの3種類。エコモードでも十二分に速いのだが、スポーツモードにセットすれば最高出力64ps、最大トルク19.9kg-mが炸裂。スムースさとパワフルさたっぷりの強烈な加速力さえ味わえるのだから恐れ入る(ただし、電費は当然悪化する)。
eKクロスEVにはいわゆるワンペダル機能のイノベーティブペダルオペレーションモードが備わっていて、アクセルペダルだけで減速コントロールが可能。その減速力はエコ→ノーマル→スポーツモードに従って強くなるのだが、エコ、ノーマルでの自然で違和感のない減速力が好印象。
軽自動車らしからぬ操縦安定性を持つ
かつてのワンペダル機能のような不自然さ、クルマ酔いを誘発しかねないギクシャク感はない。高速走行でエコモード×イノベーティブペダルオペレーションモードOFFにセットすれば、いわゆるコースティング走行のような気持ちいい滑走状態となり、電費向上にも貢献してくれるはずである。
バッテリーを床下に積む電動車と言えば、低重心自慢のクルマということになるのだが、交差点、カーブでの安定感は背の高いハイトワゴン系モデルとは思えないレベルにある。eKクロスEVの開発陣によれば前後重量配分は、かの“ランエボ”と同じ(!)前後56:44。軽自動車らしからぬ操縦安定性を持つのも、なるほど、ということになる。
ただし、首都高速にある急カーブに勢いよく突っ込んだ場面に限れば、低重心とハイト系軽自動車ならではの高めの着座位置のアンバランスからか、ドライバーにしてみれば、実際のロール量、安定感に対して、腰高感、左右の姿勢変化が大きく感じられるシーンもないわけではなかった。もっとも、カーブに適切な速度で進入すればそんなことを感じずに済むはずだが……。
というわけで、三菱eKクロスEVは割り切りある航続距離、バッテリー容量による買いやすい価格設定、これまでの軽自動車とは一線を画す上質な運転感覚、乗り心地、軽ターボと比較しても圧巻の動力性能、車内の圧倒的な静かさ、eKクロスとほぼ変わらないパッケージングによる居住性&実用性の高さなど、軽自動車のゲームチェンジャーになりうる商品力を備えた電気自動車だった。
eKクロスに準じたSUVテイストあるエクステリアデザインは、サクラよりアウトドアに似合い、ライトなアウトドア派ユーザーに受けることも間違いなしと思える。