ロータスが設計しデザインはジウジアーロのイタルデザインが担当
クルマとしてのDMC-12を解説していきましょう。まずメカニズムを設計したのはロータスで、エランやヨーロッパでもお馴染みとなったバックボーンフレームにFRP製のボディを架装する手法が踏襲されています。
センタートンネルが太く、左右のシートは大きく隔たれていますが、それもスポーツカーの趣のひとつと理解すれば、不満につながることもないでしょう。アメリカ東部にあるペンシルベニア州最大の都市、フィラデルフィアから100kmほど西にあるAACA(アメリカ・アンティーク・オートモービル・クラブ)アンティーク自動車博物館には、81年式の市販モデルと76年に完成したプロトタイプの2台が収蔵展示されていて見比べることができました。
外観のスタイリングは大きく違っていないのに、インテリアが一新されていたのは一目瞭然。プロトタイプではダッシュボードがテーブル形状となっていて広々した感がありましたが、市販モデルでは一般的なダッシュボードに変更されていました。
そんなボディに搭載されるエンジンは、プロトタイプ時にはシトロエンCX用の2175cc(90.0mmφ×85.5mm)直4プッシュロッド・ユニットを搭載していましたが、これは112psで車両重量(市販モデルで1233kg)に対してパワー不足と判断。80年に登場した市販モデルではプジョーがルノーやボルボと共同開発した、通称PRVのZMJ 159型V6 SOHCで2849cc(91.0mmφ×73.0mm)の150hp(ヨーロッパ仕様)ユニットを搭載していました。
ちなみに、このPRVのV6エンジンをリヤに搭載するというパッケージは、ルノー・アルピーヌA310 V6と共通です。バックボーンフレームに組み付けられたサスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式、リヤがマルチリンク式の4輪独立懸架となっています。
そんなシャシーに架装されるボディは、ジョルジェット・ジウジアーロが主宰するイタルデザインがデザインを担当。ガルウイングドアを持った2ドアクーペは、こうしたスポーツクーペによくみられるミッドエンジン・レイアウトではなくリヤエンジン・レイアウトを採用しています。エンジンがV6でコンパクトであることも好影響を与えているのでしょうが、リヤがボリューミー過ぎることもなく、重たい印象になっていないのは流石と言うしかありません。
そんなうまく纏められたデザインをFRP(ガラス繊維強化樹脂)で成形して完成したボディは、表面がステンレススチールのパネルで覆われていることも大きな特徴です。ステンレスパネルは、へアライン仕上げというと聞こえがよいのですが、要は無塗装で目の粗いサンドペーパーで仕上げ加工したそのまま、という訳です。
DMC-12というクルマ自体には何の責任もないのですが、社長のデロリアンさんがコカインの所持容疑で逮捕(のちに無罪判決が下されています)され、資金繰りが立ち行かなくなり会社が倒産して生産も中止とされてしまいました。
しかしその数年後に映画の主人公としてあらためて注目を浴びることになったのは、はたしてDMC-12にとって幸いだったのか、それとも……。いずれにしても今では静かな余生を過ごす個体も少なくないようです。