マウント位置によって機能性に一長一短あるインタークーラー
前置きインタークーラーがちょっとしたステータスだったのはひと昔前のこと。ちなみにスバルのWRX系はエンジン上にマウントされ、三菱のランエボは前置きだった。また、最近のスーパースポーツ系は水冷式インタークーラーを採用するモデルがあるなど、月日とともに搭載位置と冷却方法はそれぞれ変わりつつある。そんなインタークーラーの方式とマウント方式ごとのメリット&デメリットを考察したい。
インタークーラーの働きは読んで字のごとく吸入空気を冷やすこと
インタークーラーは、タービンで圧縮された吸入空気(以下、空気)を冷やすための熱交換器だ。タービンで空気を圧縮すると、その空気は熱くなってしまい、温度が高いと体積が増えるためエンジンにたくさんの酸素を送り込めなくなる。そこで一旦冷やそうというのがインタークーラーの働きだ。ちなみに吸入した空気をタービンで圧縮しただけで軽く100℃を超えるような温度になる。そのためターボ車にはインタークーラーが装着され、走行風で冷やすのが一般的。さらにどうやって走行風を当てるかでいくつかの方式がある。
ハイパワー化には必須の前置きインタークーラーのデメリットとは
まずはフロントバンパーの開口部に置かれた前置きタイプは、走行風がダイレクトに当たることが最大のメリット。しかしデメリットもあり、インタークーラーの後方にエアコンのコンデンサーが置かれ、ラジエーターはそのさらに後ろになる。つまり走行風がラジエーターに当たるまでにふたつの熱交換器を通るので、当たる風は弱くなり、温度が上がってしまうことでラジエーターが冷えにくくなる。また、タービンで圧縮した空気をバンパーの先端部まで経由して、そこから戻ってくるためパイピングが長くなることで、アクセルレスポンスが悪化するというデメリットが発生する。
そのためスバルはエンジン上にインタークーラーを置いている。この場所だとボンネットのダクトから走行風を当てることができ、インタークーラーを抜けた空気はフロアトンネルを通過してフロア下に排出されるため、コンデンサーやラジエーターに悪影響を与えることがない。
ただし、インタークーラーの設置は限られたエンジンルームのなかで行われるので、大容量タイプの大きなインタークーラーや、厚みがあるタイプに交換することは難しい。ハイパワーチューンを施すなら、スバル車でも前置きタイプのインタークーラーに換装するのが一般的だ。
そんなスペースや走行風の悩みを解消してくれるのが、水冷式インタークーラーだ。冷却方法はエンジンの冷却水を使って、ターボで圧縮し熱くなった空気を冷やすタイプとなる。クーラントはつねに100℃くらいの温度になり、それでも効果があるほど圧縮した空気の温度は高く、近年のスーパーカーでは採用例が多い。メリットは走行風を当てる必要がないので、空力的な乱れも起きないしスペース的にも有利なのだ。
美点の両立が難しいインタークーラーの悩ましい機能性
前述した通り、インタークーラーはいかに圧縮した空気を冷やすかが重要になるが、それと抵抗はトレードオフの関係にある。チューブの厚みやフィンのデザインによって熱交換の効率は変わるが、基本的によく冷える=抵抗が多くアクセルレスポンスが落ちる。あまり冷えない=アクセルレスポンスに優れる。という構図になる。
それらはチューブの内部をどれだけ抵抗になるデザインにするかが関わる。抵抗を増やすためチューブ内部にフィンを入れて冷やすこともあるし、チューブ内部をS字にさせて滞留させる時間を稼ぐこともある。レスポンス重視なら、フィンの向きを抵抗が減る方向で入れたり、チューブ内部には何も入れないなどの方法もある。インタークーラーのメーカーによっては、そういった要望を受け付けて内部構成を変えてくれるメーカーもあるのだ。
理想的なインタークーラー選びのポイントとは?
ではどのようなタイプを選ぶべきか? 例えば、元々アクセルレスポンスに優れる純正タービンなら、多少レスポンスを犠牲にしてでも吸気温度を下げてガッツリとブースト圧をかけてパワーアップを狙うのも手だ。逆に、元から優れるレスポンスを損なわないように低抵抗タイプにして、鋭い走りを維持する方法もある。ハイパワーチューンで最高速やドラッグレースのようなパワー至上主義なら、抵抗が増えてもしっかり冷やしたいなど、いくつも選択肢がある。
さらに前置きインタークーラーにするなら、その後方のコンデンサーとラジエーターのことも考えなければならず、あえてフィンピッチを緩くして、走行風が抜けやすくしているメーカーもあるほど。それぞれどういった設計思考なのかをよく理解して選ぶようにしたい。