ブーストダウンしたほうが速く走れることがある
しかし、じつはブースト圧を下げることもある。そして、それはエンジン保護が目的ではなく、速く走るためにブーストダウンをすることがあるのだ。その理由がタイヤのグリップとの関係にある。
ありがちなのが、リヤ駆動車でサーキットの1本目「まずは様子見だから、ローブーストモードで走ろう」と走行。走行2本目で「よし、本気だ、ハイブーストにして一気にタイムアップ!」と思ったら、なんとタイムが下がったという話だ。
気合いを入れてハイブーストにしたら、リヤがスライドしてドリフト状態になり、前に進まずタイムダウンしたという例は大変多いのだ。
ハイブーストだと鋭くパワーが出た瞬間にリヤタイヤがブレイクしてしまうので、しっかりと向きが変わってから──つまり、ほぼストレートに入ってからアクセルオンすることになる。
ならば、むしろブーストダウンして、早めからアクセルをじんわり開けて行ったほうが良い。低めのブースト圧にして、コーナー立ち上がり途中からアクセルを踏んだほうが、ピークパワーは劣っても早くから加速が始まるので結果的にストレートでも速くなってしまうのだ。
踏めないパワーは無駄!
踏みこめない程のパワーは遅くなるだけでなく、タイヤも減りやすい。駆動系にも負担が掛かる。エンジン本体にも決して良くない。と、このような理由から、レースでは最高ブースト圧よりも下げて走るのは珍しくない。むしろ、安定したラップタイムを刻みやすく、トータルでは速くなってしまうことさえある。
レース界で有名なセッティングエンジニアも「踏めないパワーは無駄」と、限界までセッティングを確認したあとは、ドライバーがどれだけ踏めているかを確認しながら、ブースト圧をバンバン落としていくという。速く走るためのブーストダウンもアリなのだ。