パワーアップさせるなら排気量アップも有効
日産のRB26は2600ccから2800cc、シルビアのSR20は2000ccから2200cc、ランエボは2000ccから2200ccもしくは2300ccに排気量アップするのが定番メニューのひとつ。10%ほどの排気量アップでなにが変わるの!? と思いきや、それが大違いなのである。
シリンダーの直径を広げるボアアップが基本
排気量アップチューンは王道にして最大の効果を持つ。ポート研磨しようが、圧縮比をアップしようが、なによりも効果的なのは排気量を上げてしまうこと。燃焼室が大きくなればたくさんの燃料と空気を入れることができ、苦せずして簡単にパワーアップが可能だ。
そこで大幅に排気量アップをしたいものだが、現実的には10%程度が限界なのである。いわゆるボアアップは燃焼室の直径を広げるチューンだが、現代のエンジンにはそれほど余裕がなく、ほんの少ししかボア径を広げられない。
GR86/新型BRZのエンジンは、メーカーが作ったボアアップともいえるもの。先代の86/BRZのエンジンのストロークはそのままにボアアップを施され、2400cc化されている。シリンダーブロックが変更になっていて、2割の排気量アップなわけである。
ストローク変更で排気量をアップさせる方法もある
そこで今度はストロークアップが出てくる。クランクシャフトを変更して、排気量をアップするチューンである。しかし、やりすぎるとストロークが長くなることで高回転を回すのに向かなくなってくる。その分、低回転からトルクを出しやすいので走りやすくはなるのだが、官能的な高回転のフィーリングが薄れることもある。
CT系(エボ9)までのランエボではデリカのクランクを流用した2400cc化までがあるが、高回転の伸びとギヤのつながりを考えると2300cc化の方がサーキットに向いていると言われる理由もそこだ。
そんな排気量アップだが、10%程度でもかなり効く。「もうちょっとトルクがあったらなぁ」のもうちょっとがこの10%分なのだ。ターボ車なら「もう少しだけ下の回転からブースト圧が立ち上がると乗りやすいのに」と思うところで排気量アップすると、ブーストがしっかりと掛かってくれるのだ。
ターボ車ではブースト圧が掛かるポイントが下げられるということは、もっと大きなターボも装着できる。そうなると一気にパワーアップも可能になる。元の排気量でも高回転だけならそこそこ大きめのタービンも回せるのだが、いわゆるドッカンターボになりがち。
それが、中回転からブースト圧が掛かるようになるので、大きめのタービンも普通に使えるようになる。排気量アップによるピークパワーアップの恩恵というより、タービンの選択肢が増えるのだ。
後付け可変バルブタイミング機構も登場し選択肢が広がった
その代名詞的存在がスカイラインGT-Rだ。このエンジンは官能的なサウンドとフィーリングで数々のチューナーやチューニングフリークを魅了してきた。
RB26は2600ccターボエンジンのわりに高回転型なのである。一方、ずっと排気量の少ないランエボの4G63は低中回転重視のトルク型。速さはあるが、官能的な吹き上がりは……ない。対するRB26は気持ちの良さでは世界トップクラスとも言える。直列6気筒がゆえのシルキーさが気持ち良い。
しかし、高回転型であるがゆえに低回転のトルクが弱い。そうなると街なかでは乗りにくいし、大きなタービンを組み合わせるともっと低回転が弱くなってしまう。そこで2800ccキットがバカ売れしたのである。わずか200ccだが排気量アップすることでトルクは増え、大きなタービンも回せるようになった。
余談だが、さらにHKSからVカムと呼ばれる可変バルブタイミング機構を後付けするパーツが発売され大人気に。これにより2800cc化+Vカムは定番化されたと言っていいだろう。
排気量アップは全域でのパワーアップもトルクアップも可能にする最強チューンである。わずか10%の排気量アップでも大きな効果を持っているのだ。