「バネット」の上級モデルだった「ラルゴ」
今回のお題は「日産ラルゴ」と、なかなか渋めである。ラルゴはもともと1BOXカー時代のバネットの上級モデルとして1982年に登場したもので、カタログの表紙にも「バネットの豪華ワイド版」とうたわれていたとおり、標準のバネットが1600mmの全幅だったのに対し、ラルゴは1690mmとグッと拡幅しての登場だったのが特徴。当時のカタログの諸元表を見ると、室内幅もベースのバネットに対しキッチリと90mm幅広の設定で、リムジンシートをはじめ、ワンボックスカーでは初のチルト&テレスコピックステアリング、センターレバー式駐車ブレーキとコンソール、水晶発振式デジタル時計など、装備レベルを一段と高めたクルマとして設定された。
キャブオーバー型としては1986年にもう1世代あり、このモデルは近代的な直線フォルムに、1BOXタイプでは珍しかった、ガラスハッチの開閉も可能なバックドア、アジャスタブルショックアブソーバーなどを備えた。「ヤマアラシ」「ウミボウズ」の特別仕様車が設定されたのもこの世代だった。
セミキャブオーバーの3代目は走りも秀逸
そして1993年5月に登場したのが3代目ラルゴ。1列目シート下にエンジンを搭載し(そのために前席左右間の足元はモコッと膨らんでいた)、短いながらもノーズがあるセミキャブスタイルのクルマで、ひと足早く1991年6月に登場した5ナンバーの初代セレナとベースは共用、全幅を1745mmとした専用の3ナンバーボディとしていた点が特徴だった。
当時の空気感としては、日産車でもまだ1BOXのキャラバン/ホーミーが残っているころで、車名のとおりのラルゴのゆったりと優雅な雰囲気は、なかなかの存在感を発揮した。ちなみにフロントコンパートメントと呼ばれたノーズ部分には各種補機類が手際よく収められていたほか、スペアタイヤもここに格納されていた。
自動車雑誌的な着眼点でもこのラルゴはかなりこだわった仕様だった。5ナンバーのセレナ同様、リヤサスペンションはマルチリンク式が採用され、「GTパック」仕様(後期型)では4輪操舵システムの「SUPER HICAS(スーパーハイキャス)」や、スカイフック制御のアクティブダンパーサスペンションなども投入されていた。カタログを読みかえすと、4輪操舵の説明箇所には「尻振りなどの現象を抑えるため、サードシートの方の快適性も向上し、クルマ酔いも防ぎます」などと記されている。運転席SRSエアバッグシステムとABSは全車に標準装備されるなど、先進の安全装備の投入にもぬかりはなかった。